音楽は「お買い得な娯楽」であり続けられるか? - デジタル音楽時代の葛藤
2006/02/19日曜コラムです。こんばんは。
先週流れたこんなニュース。ニュースとしては、
「何気ない RIAAタン のひと言に、
EFFタン が大げさに噛み付いてみました」
的なところがあるのですが、一方にとって何気ないひと言が、
もう一方にとって衝撃的なひと言に聞こえるということ自体が、
この問題の根の深さを物語っているのかもしれません。
■「iPodへのCDリッピングは公正使用にあらず」とレコード業界
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0602/17/news076.html
現在、3年ごとに行われるデジタルミレニアム著作権法(DMCA)
の見直しプロセスが進められており、その中で全米レコード協会
(RIAA)などの業界団体は、手持ちのCDをコピーする場合でも、
コンテンツの場所やフォーマットを変えるのは非侵害的な利用とは
見なさないと主張しているという。
発言としてはワリと想定内です。家庭内の私的複製に関しても、
彼らは常に
「我々の儲けを大幅に損なわない範囲では法的手段は取らない」
と言っていただけであり、私的複製の権利を恒久的に認めるという
趣旨の発言は、音楽業界からはほとんど聞かれないハズです。
「CDは 1枚○○○○円 です。ありがとうございます~」
ただし、「パソコンで聴くなら別料金です~」
ただし、「iPod で聴くなら別料金です~」
ただし、「カーオーディオ で聴くなら別料金です~」
ただし、「ケータイ で聴くなら別料金です~」
ただし、「家族みんなで 聴くなら別料金です~」
ただし、「友人に貸す なら別料金です~」
ただし、「オリジナルのベスト版 を作りたいなら別料金です~」
ただし、「3年以上 聴くなら別料金です~」
何だか 「管理の厳しい自動車屋さん」を思い出してしまいました(´ω`)
ということで再掲載。
■2004/08/12 [管理のきびしい自動車屋さん 出題編管理のきびしい自動車屋さん (解答編)
管理のきびしい自動車屋さん(解答編)]
活用範囲を狭く制限されれればされるほど、商品の価値は下がります。
それに払っても良い金額が減っていくということです。
何度も払わせれば儲けになる? いえいえ、何度も払わなくては
いけない商品には、人々は寄り付かなくなるのです。
せっかく昔の記事のお話が出てきたのですから、この話題について
触れているコラム記事について一度全ておさらいしてみましょう。
2004年頃(Doblog時代)のコラムは一度も見たことがないという方も
多いと思いますので、これを機にご覧頂ければと思います。
(※昔のコラムにはコメントが付いていませんが、これは記事の初掲が
Doblogだったためです。Doblog上の該当記事にはコメントが付いています。)
■2004/02/17 [音楽の輸入権に絡む著作権法改正について音楽の輸入権に絡む著作権法改正について]
ただし、「コントロールしてもよい」と、「コントロールしても嫌われない」は
同じではありません。上の例はワザとそれをほのめかして見せました。
コントロールをした「理由」ではなく、コントロールをした「結果」が
消費者にとって不条理であれば、その消費者からは嫌われるということは
覚悟しなければなりません。
■2004/03/27 [CCCDに「消極的賛成」な人が多いらしいのですが?CCCDに「消極的賛成」な人が多いらしいのですが?]
■2004/05/17 [Winny・CCCD・輸入権 - 「加速したい社会」と、「加速したくない社会」Winny・CCCD・輸入権 - 「加速したい社会」と、「加速したくない社会」]
■2004/06/21 [数多在る娯楽の中から「音楽」を選ぶとき、選ばないとき数多在る娯楽の中から「音楽」を選ぶとき、選ばないとき]
ふと我に返って考えるのです。
「あれ・・ そこまでして買いたいモノだったっけかな・・・」
■2004/08/12 [管理のきびしい自動車屋さん管理のきびしい自動車屋さん]
■2004/08/13 [管理のきびしい自動車屋さん(解答編)管理のきびしい自動車屋さん(解答編)]
店:「そのうちAppleのiPodを・・・」
客:「追い抜けねぇよ!」
■2004/09/22 [CCCDが何故嫌われるかを、「彼ら」は知っていたかCCCDが何故嫌われるかを、「彼ら」は知っていたか]
だから知らなかったのです。「デジタルJUKEBOX」でなければ
もう楽しくないコト。「デジタルJUKEBOX」に組み込めない素材は
買っても仕方が無いというコト。だって「彼ら」は、
音楽を「楽しむ側」の人間ではなかったのですから・・。
■2004/10/07 [それは自分だけの武器だったハズだったそれは自分だけの武器だったハズだった]
■2004/10/20 [「私の知らないところで勝手に音楽を聴いてもらっちゃ困る」「私の知らないところで勝手に音楽を聴いてもらっちゃ困る」]
■2004/10/21 [オレ様が買った曲を、オレ様が聴けない不思議オレ様が買った曲を、オレ様が聴けない不思議]
一方、リスナーにも絶対に譲れない線があります。それは
オレ様が買った曲を、オレ様が聴く
というアタリマエの領域を侵すな、ということです。
■2004/11/08 [「着うたフル」のアタリ価格とは「着うたフル」のアタリ価格とは]
■2005/01/30 [音楽配信「売り手の精一杯の妥協」は、買い手に全く届かない。音楽配信「売り手の精一杯の妥協」は、買い手に全く届かない。]
「ねぇ、その楽曲、たった数年でライセンスが消えそう
なワリには、ちょっとばかし高すぎやしませんか。」
■2005/02/13 [私的録音・録画補償金制度で「生活に関わる」影響を受ける人々私的録音・録画補償金制度で「生活に関わる」影響を受ける人々]
「この利権を守る戦いに敗れたら、君らのうち半分くらい解雇ね。」
このひと言を「ボソッ」とつぶやいただけで、末端のサラリーマンには激震が
走ります。そして翌日から彼らは 「利権を守るための兵隊」 に様変わりするのです。
■2005/05/22 [iTMSは日本に来ないで欲しい(?) - 「iTMS歓迎」大合唱の謎iTMSは日本に来ないで欲しい(?) - 「iTMS歓迎」大合唱の謎]
■2005/07/31 [自らの亡霊に怯える音楽産業 - 永遠の命を得たデジタルデータ自らの亡霊に怯える音楽産業 - 永遠の命を得たデジタルデータ]
購入したCDをiPodに放り込んで聴く、それだけで 「損害」 になる?
実は私は、それがあながち笑い話ではない、と思っています。
■2005/10/30 [名前ばかりのデジタル - 「キレイ」の名の下に魂を失う前に名前ばかりのデジタル - 「キレイ」の名の下に魂を失う前に]
■2005/12/25 [「キレイ」はユーザの需要を飛び越した? - 評価の機軸が一変するとき「キレイ」はユーザの需要を飛び越した? - 評価の機軸が一変するとき]
■2006/01/08 [脱・メディア宣言! - 購入したいのは「コンテンツを楽しむ権利」脱・メディア宣言! - 購入したいのは「コンテンツを楽しむ権利」]
私たちは、記録メディアやデータを購入したいのではなく、
視聴する権利を購入したいのです。
音楽を使いやすくするべく登場したiPodなどのデジタル機器の登場に伴い、
逆にどんどん使いにくくなるように仕向けられていく音楽コンテンツ。
しかし、その背景には、音楽業界の悲痛な叫びがあります。
彼らの望みは「儲けを増やしたい」ということよりもむしろ、
「儲けを減らしたくない」 という1点に集中しています。
しかし、彼らは今までどおりの儲けを維持するという目的のために、
消費者に刃を向けるしかないという状況に追い込まれています。そして、
刃を向けられた消費者は、また消費を減らすという悪循環を招きます。
ポイントを2つ挙げてみましょう。この2つは似ているようで違います。
1、デジタルコンテンツは劣化しない
「30年前に購入した車が今も新車同然です」なんてことはあり得ません。
ありとあらゆる「モノ」は劣化し、利用価値を失います。
Sonyタイマーの都市伝説は大げさなものの、モノを作るメーカーなら誰しも、
モノには適度な期間で壊れていって欲しい
と願っています。それが商売が循環する要(かなめ)でもあるのです。
とことが、デジタルコンテンツは劣化「してくれません」。
劣化してくれないと、買い換えてくれません。
2、音楽(芸術作品)は性能向上しない
「CPUが3GHzになったけど、133MHzのCPUもそれはそれで趣があってイイよね」
なんて言う人はいません。性能が時と共に進化しているため、
古いものは自然に取引価値を失います。逆に言えば、
昔のモノから取引価値を失わせるために
メーカは性能向上に注力するのです。
ところが、音楽(芸術作品)には明確な性能向上の基準がありません。
制作機器も手法も進化しているように見えますが、それでも
新しい曲がいつでも古い曲より価値が有るかと言えば、全くそうなりません。
音楽を商材として扱うビジネスが、「デジタル」という世界に突入することによって、
今後いかに茨の道と成り得るのか、これだけを取ってみても良く判るでしょう。
消費者もバカではありませんから、今までより使い勝手の低いものを
今までより高く買わせようとするような取引には安易に応じてくれません。
■iPod課金、見送り方針を維持
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0512/01/news071.html
権利者(創作者)が第一に保護されるべきであるという方針に変わりはない
創作者は考える必要があります。この言葉にどこまで信頼を寄せてよいものか。
すなわち、いくら手厚く保護してもらっても、音楽に新たにお金を払う人の数が
減ってしまえば、
手厚く保護されたまま死に絶える可能性がある
ということです。それをリアルにイメージできるかどうかが問われています。
「音楽聴くのって、結構メンドイよね~。
何かこっちだと聴けるとか、あっちだと聴けないとかさぁ~」
「あ~それオレも思った!
何かそこまでして聴かなくてもいいかな、とか思っちゃうよな~」
こんな会話が普通にされる時代に対して、
他でもないアーティストの人々が恐怖を感じて
いなければなりません。
新しい娯楽のライバルは増え続けています。音楽が「お買い得な娯楽」で
あり続けられるのかどうか、そのために為すべき課題は山積みされているのです。
2006/02/19 [updated : 2006/02/19 23:59]

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