脱・メディア宣言! - 購入したいのは「コンテンツを楽しむ権利」

2006/01/08

日曜コラムです、こんばんは。
 
以前から私がコトあるごとに触れてきた 「楽曲を聴く権利」 の考え方
ですが、ここでもう一度、振り返ってみることにしましょう。
 
「楽曲を聴く権利」の考え方とは、CD、WMA、AACといった「モノ」や「データ」
にお金を払うのではなく、
 
 楽曲そのものを聴く「権利」を、お金を払って手に入れる
 
という考え方です。私がもし、平井堅の「VIP STAR」・・・いや、違う・・・、
「POP STAR」の聴く権利を購入したとしたら、私は部屋のコンポやPCで、
携帯音楽プレイヤーで、そしてカーオーディオで、どこでも聴くことができる、
そんな権利のことを「楽曲を聴く権利」と表現しました。
 
音楽配信でコピー制限つきのWMAデータを購入しても、この「楽曲を聴く権利」
を手に入れることはできません。これからの長い人生、私がこの「POP STAR」
という 楽曲を聴くために使用する機器の数 は非常に膨大なものになります。
PCも、コンポも、携プレも、カーオーディオも、数年ごとに買い換えるでしょう。
そしてどれも精密機器である以上、不意に故障するかもしれません。
現に、HDDはPCの中で最も壊れやすい部品の1つなのです。
 
 「コピーは3回まで」
 
業界関係者は「3回もコピーさせてやってるんだから、それで文句を言われても」
というスタンスなのかもしれませんが、それを受けた私たち消費者が、
「たった3回程度では全く足りない、いや回数は何回であっても不安は取り除けない」
という思いに至ってしまうのは、上記の通り、一度購入した楽曲が、
数年後に聴けなくなってしまう可能性 が極めて高いからです。
 
「ケチケチせずに、聴けなくなったら その都度買い直して くださいよ~」
 
そう言われてホイホイと買いなおせるほど、消費者はお金に寛容ではありません。
それを考えれば、一度購入した楽曲は永久に再ダウンロード可能にすべきでしょう。
 
その永久再ダウンロード保証がある前提であってもなお、携プレなどの
外部機器に対する転送回数制限が存在していたら、まだ不安は取り除けません。
何年かしたら、購入した楽曲のうちの大半は、二度と携プレに転送できない
 
 「死に楽曲」になってしまう危険
 
があるのです。だから私たちは、記録メディアやデータを購入したいのではなく、
視聴する権利を購入したいのです。
 
このお話は音楽に限らず、DVDの映像コンテンツなどでも全く同じです。
そんなことを思い出したのは、以下の記事を目にしたからでした。
 
■西正が贈るメディア情報「コピーワンスに関する所信表明」
http://plusdblog.itmedia.co.jp/nishitadashi/2006/01/post_908c.html
■西正が贈るメディア情報「コピワン擁護論者とは、、、」
http://plusdblog.itmedia.co.jp/nishitadashi/2006/01/post_a90b.html
今は「コピーワンス」と「DVDの使い勝手の悪さ」がイコールのように
語られているが、本当にイコールなのかというのは大いに疑問だ。
「はい、イコールです」と言う人もあるだろうが、それは「今」の話だろう。
今の状況ではイコールだというだけではないか。コピーワンスに手をつけないと、
DVDの使い勝手が良くならないというのは、あくまでも「今」の話だろう。

西さんのお話は、業界の内部事情を良く知る方の情報としていろいろ参考になる
部分が多く、私もよく読ませていただいています。(ただ、コメント欄に於ける
氏の振る舞いが、議論の不毛化を誘発している気がするのは残念でなりません・・)
 
「コピーワンスを撤廃すれば全ては上手くいくハズだ」
 
という議論には私も組したくはありません。それは西さんと同じです。
ですが、コピーワンス自体を撤廃したり大幅に緩和したりしなくても、
DVDの種類の多さによる混乱などを解決していけば、使い勝手を改善していく
ことは可能だろう、という論旨にはどうしても違和感を感じてしまいます。
 
それは、「コピーを回数で制限する」 という考え方そのものが、上記の
「コンテンツを視聴する権利」という考え方とバッティングしてしまうからです。
 
■2004/10/21 [オレ様が買った曲を、オレ様が聴けない不思議
オレ様が買った曲を、オレ様が聴けない不思議]
一方、リスナーにも絶対に譲れない線があります。それは
 
 オレ様が買った曲を、オレ様が聴く
  
というアタリマエの領域を侵すな、ということです。自分が買った曲を自分が
聴くときに「違法だ」と咎められる、こんなバカバカしい話はありません。

私は極端な話、私がお金を出して購入したコンテンツを、私が視聴することを
妨げないという保証さえあれば、
 
 「Copy Once」どころか「Copy Never」であっても
 
全然かまわないと思っています。何故私たちはコピーをしたいのか、それは、
自分で購入したコンテンツを
 
 「いつでも、どこでも、いつまでも」 視聴したい
 
そんな当たり前のことを実現するために、今までは私たちが自分自身で
手間を掛けてコピーするしかなかった からなのです。
 
 
小寺信良さんが、この「コンテンツを視聴する権利」と同じ考えを主張されています。
 
■対談 小寺信良×津田大介(1)――「CCCDはみんながやめたいと思っていた」 (3/3)
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0410/14/news041_3.html
小寺:僕に一つ提案があるんです。もっと、個人認証技術を進めるべきだと
思うんです。要するに、このコンテンツが誰の物であるかを明確にできれば、
その人が持ち出す限りはOKであるという、そうした考えで世界を変えていかないと。
誰がコンテンツを触るかに関係なく、回数だけで制限するというと、なんだか、
もう、訳の分からない制限になっていっちゃうじゃないですか。
 何でダメなの?というか、俺が録画した物をなんで俺の携帯で見ちゃダメなの?
そんなの、全部個人認証を行って、コンテンツに対してメタデータをつけてやれば
解決する。本人が見ていると確実に分かれば、別になんの問題もないわけですよ。

そう、「コンテンツを視聴する権利」を実現するには、結局のところ、
個人認証 を行う必要があります。すなわち、私がもしiPodを購入したら、
まず最初に自分のiPodに 自分のIDを登録する 作業をするのです。これによって、
そのiPodは 「私が購入した楽曲を全て再生できる携プレ」 になります。
 
コンポも、カーオーディオも、全て同様です。また、映像プレイヤーなどでも
考え方は全く一緒です。私のレジストコードが刻まれた機器は、私が購入した
コンテンツの再生を拒否しないという保証が生まれる世界になるのです。
 
定期的にネットワーク・アクティベーションが行われることを前提にすれば、
コンテンツ管理サイドは、1つのIDが大量に出回っている場合に限り、
それを 不正IDとして停止する手段 を持ち得ます。
 
逆に機器の側は、IDを家族の人数分登録できるような機構を持たすことによって、
家族全員が同じ機器を使ってコンテンツを楽しむことができます。更には、
カード認証や生態認証などで、機器に 「一時的な権利認証」 の手段を持たせる
ことによって、友人の家や車の中でも、自分が同伴している時だけ、自分が
購入したコンテンツを視聴できるようにすることが可能かもしれません。
 
「ユーザ自身の手によるコピー」 という面倒な作業に多くの消費者が執着
するのは、こうした「当たり前を実現する環境」が整備されていないからなのです。
 
 
さて、コラムの最後に、私が 4年以上前に書いた文章 を載せておきましょう。
 
これは私が自費制作で配布していた3作目の音楽CD (2001年9月30)に
おまけテキストとして掲載していた文章の再掲載です。CCCDという名称が
一般に浸透する前から、私はずっと「楽曲を聴く権利」の必要性を説いて
きました。そして4年経った今も、そのスタート地点は見えないままなのです。
 
■音楽のコピー防止をめぐる戦い (2001/09/30)
 
 「Michael Jacksonのニューシングル、
  "Rock Your World" にもコピーガードが掛かっている」
 
そんな記事をZDNetニュースの記事で読みました。
MacrovisionのSafeAudio というコピーガードが少しずつあちこちの
レーベルで実験されているようです。このSafeAudio、CDのあちこちに
不正データを組み込んでいるのが特長で、エラー訂正の弱い音楽CD
再生機ですとあまり影響なく聴くことができるのですが、
PCのCD-ROMドライブのように高性能(神経質)な機器では、
はっきりと「ブチッ、ブチッ」というノイズとして現れてしまいます。
 
この仕組みによって、SafeAudioで保護(?)されたCDは PC上にノイズ無く
リッピングされることがなく、ひいては旧Napsterのようなネットでの
無制限配布に至ることもなくなる、というわけです。
 
いわずもがな、これに対して多くの人々が抗議の声を上げています。
代表的なところではこんな感じです。
 
 1. PCで再生できないことを明記しないで
  販売しているのは、消費者を欺く行為だ。
 
 2. カーオーディオはCD-ROMドライブで作ったものも
  多く、これで再生できないのはヒドイ。
 
 3. 普通のCDプレーヤーでは判らないといっても、
  聴く人が聴けばわかる。音質をワザと落とすとは何事だ。
 
たしかにどれももっともに聞こえます。ただ、これらの意見の指し示す
先は、「今までのCDに戻しなさい」という要求でしかありません。
その方法では、企業側が一方的にコピーの不利益を被るだけとなって
しまいますから、企業側としてはやはり承服はできないでしょう。
 
 
私の思いは、少し違います。
 
私が音楽にお金を払うときに本当に買いたいのは「CDをCDプレーヤーで聴く権利」
ではなく、
 
 「その音楽をどこでも自由に聴ける権利」
 
です。家の1階でも2階でも、CD/MDプレーヤーでも、PCでも、カーオーディオでも、
ポータブルプレーヤーでも、そのほかいついかなる時でも…、
 
自分が権利を購入した音楽をすぐ簡単に聴くことができるのであれば、
それで十分なのです。そのようなツールが企業から用意されていないために、
仕方なく自分で、MDに録音し、PCでリッピングし、CD-Rに焼き、あるいは
MP3に変換し、様々な苦労の末にようやく理想に近い環境を手に入れているのです。
 
 「買った音楽をいつでもどこでも聴ける」。
 
そんな簡単なことを実現するだけのために、ユーザ自身が何度もコピーを
繰り返す必要があるという、そんな現状の音楽鑑賞の仕組みそのもののほうが
実は問題なのではないかと、私はそう思うのです。
 
ユーザはなぜ、音楽を聴くためにコピーをする必要があるのでしょう。
「買った音楽をいつでもどこでも聴ける」仕組みがあれば、
ユーザはコピーをしなくてもよくなるのではないでしょうか。
例えば、これはちょっと未来的発想になりますが、あらゆる音楽再生機器が、
ユーザIDを確認する機構と、ネット経由で視聴権限を確認する機構を持つ
時代になれば、どの機器でも、私が視聴権利を買った音楽を、自由に聴ける
ようになるでしょう。一方でレコード会社側としても、私が視聴権利を
買っていない音楽を視聴することを的確に防ぐことができるでしょう。
 
 
私が望んでいるのは、そんな世界です。
 
自分がお金を出して買った音楽が、制限だらけで自由に聴くことができないなんて、
悲しすぎます。音楽を販売する企業は、音楽をいつ、どんな場所で聴けるように
するかという「自由度」が、音楽そのものの価値を大きく左右してしまうことを
知って欲しいと思います。消費者は、価値の低いものにはお金を出さないのですから・・・。
 
また、自由に聴ける権利を守るためには現状のままでいい、という一般消費者には、
違法コピー者にも同じ権利を与えてしまっていることが、レコード会社を苦しめ、
ひいてはアーティストに投資できる金額も圧迫してしまうことを理解して
欲しいと思います。利用者は、視聴の自由度を狭めてしまう技術には
はっきりと低い評価を与える一方で、逆にコピーフリーの現状には、
ちゃんと違和感を持ちつづけるべきだと思います。


2006/01/08 [updated : 2006/01/08 23:59]


この記事を書いたのは・・・。
CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
ブログ「デジモノに埋もれる日々」「アニメレーダー」「コミックダッシュ!」管理人。デジモノ、アニメ、ゲーム等の雑多な情報をツイートします。




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wacky 2006/01/09
自分の購入したコンテンツを自由に試聴する権利について。個人認証による解決のストーリー。ネットワークを必要とするシステムはどうもなぁ。
kinow 2006/01/09
ユーザーにとって本当に使いやすいシステムを構築すること。個人認証によるコピー配布の防止をし、個人では好きなときに好きなように楽しめる仕組み
usj12262 2006/01/09
携帯電話の基地局をネットワーク機器にも使えるようにすれば実現可能!
hidematu 2006/01/09
音楽レーベルはなぜ個人認証の必要性を訴えない?
ono_matope 2006/01/09
個人認証という突破口。
ken_wood 2006/01/09
>「コンテンツを視聴する権利」を実現するには、結局のところ、個人認証 を行う必要があります。
John_Kawanishi 2006/01/09
個人認証か…
tomozo3 2006/01/09
俺も同意見だけど、解決策は難しいよねぇ
cvyan 2006/01/09
どこでもiPod内の曲が再生できる、でもいいよ。
oguogu 2006/01/10
[66ビジネス]
YOSHITO 2006/05/06
デジタル音楽市場について,みんな考えている主張が簡潔に書いてある。
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▼ コメント ▼

No.1993   投稿者 : たけぞう   2006年1月 9日 08:45

はじめまして。いつも楽しみにしています。
今回のコラムも「そうだよなあ」と”激しく同意”しながら読ませて頂きましたが、
しかしこういう記事を見る度にある記事が思い出されて、憂鬱になります。

ITmediaライフスタイル:ブルーレイは大好きだがコピーワンスは大嫌い
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0410/06/news077.html

昨年2月の記事ですが、放送業界の方で「録画させない事が目的」等と言い放つ人が
ディスカッションの場に出てくるという事は、「その人の意見」ではなく業界的に
その方向を向いているのだと思われても仕方が無いように感じます。
今は多少マシなのかも知れませんが、既にテレビをニュース以外あまり見なくなって
しまった私には「もうどーでも良いよ。見ないから」と悲観的になってしまいます。


No.1998   投稿者 : メッシュ   2006年1月 9日 15:56

アップルのiTMSの著作権保護機能はまさに願ったりかなったりです。
自分のマシンではたくさんコピーを作成できて複製もバックアップも他のマシンに持っていくことも可能です。
iPodに入れれば車でも電車の中でも楽しめます。
でも再生するときは認証が必要なので、仮にそのファイルが他人の手に渡っても、権利を持っていない他人はそのファイルを再生できません。
購入した本人には最大限の自由を、違法コピ−には制限を、という理想をきちんと両立しています。
この単純な原則が守られないから、他の音楽配信サービスやコピーコントロールCDは批判されるのでしょうね。


No.2001   投稿者 : 三戻   2006年1月10日 20:04

まったく同意です。
個人認証ありきの取引には私が考えるところもあって、
いろいろ言われている”匿名のインターネット”に対するのは
非匿名ではなくて
個人認証ありきの”守られたインターネット”じゃないかと思います。
まああ、どれだけの規模で出来るかが問題なわけですが、少なくとも
政府が投資するだけの価値があると思います。

まあ、楽曲配信について言うなら、著作権を守れるのは
アクセスコントロールでも、コピーコントロールでもない
第三のコントロール、取引相手をコントロールする
ディストリビュートコントロールしかないとでもいっときますか?


No.2004   投稿者 : zero-52   2006年1月11日 02:32

個人認証、いきつくところはそこだと思うんですが、
その認証を、さまざまなメーカーのさまざまなハードウェア上で、
統一して行うのは容易ではない、と思ってます。
またCKさんは文中で、家族云々をおっしゃられていますが、これがクセ者では?と思います。
なぜなら家族はそのコンテンツを視聴する権利に対する対価を払っていないし、
また、認証技術が家族関係まで管理できないからです。
「なりすまし家族」これを防ぐ手立ては、対面による書類等を交えた確認以外にないと思ってます。

モラルがほぼ失われた今、利便性を上げることは、売る側にとって決して良いことではないです。
性悪説に基づき、各種規制をかけるのは致し方なし、と思います。

私は、欲しい音源はCD等の媒体を買います。
ネットでは買いません。
なぜなら、ネット配信で安いぶん、CKさん言うところの「聴く権利」には制限があって当然、と考えているからです。
(現行の技術や法規制などの範囲内で)
なので、聴く権利を制限されない方法で、音源を手に入れるようにしています。
ていうか、ネット配信の音楽は色々制限があって面倒なだけなんですけどね^^;



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デジモノに埋もれる日々 : (C) CKWorks