私はまた戻ってきた - ゲームのある生活、ゲームに使える時間

2007/01/28

日曜コラムです、こんばんは。
 
次世代ゲーム機戦争、そのスタートダッシュを制したのは Wii でした。
ただ、ふと国内のハード販売データを見てみると、Wiiが快進撃を続ける一方で、
その上に 常にDSLiteが君臨している姿 というのが見て取れます。
 
■メディアクリエイト - 週間ソフト&ハードセルスルーランキング
http://www.m-create.com/jpn/s_ranking.html
2007年1月15日~1月21日
DSL 127,647
Wii 86,395
PSP 37,032
PS3 21,105
PS2 20,169
Xbox360 7,041

1週間ぶんのデータですので、そのときどきの事情にも左右されますが、
最近数週間の傾向は概ねこんな感じです。Wiiが首位を奪取したことはなく、
ずっとDSLiteが王者として君臨しています。そんな中でWiiだけは健闘している
数字を出していますが、それ以外のゲーム機は軒並み大差をつけられている
というのが実情のようです。まさに任天堂、我が世の春といったところでしょう。
 
この「DSLite、Wii」と、「PSP、PS3、PS2、Xbox360」の間には1つの壁が
ありました。既に多くの方から言われていますが、DSLiteやWiiは
ライトゲーマー、いや、より正確に言えば、
 
 「今までゲームをやっていなかった人」
 「すでにゲームから離れてしまった人」
 
に対する市場を切り開いたというのが大きな勝因となっています。
これはいまや誰しもが納得することでしょう。
 
 
ちなみに、実はわたし自身 「ゲームを全然やらない人」 でした。
スーファミまでは持っていましたが、PSは迷った末、結局買いませんでした。
PS2でさえも結局購入せず、ここ10年でまともにプレイしたゲームは
PC版オンラインゲーム「FFXI」ただ1つ、という状態です。
 
その私が、DSLiteを、Wiiを買いました。
 
 まさに10年ぶりのゲーム復帰です。
 
そして、実際にDSLiteで「マリオカート」や「世界樹の迷宮」を、
Wiiで「はじめてのWii」や「Wii Sports」を十二分に楽しんでいます。
 
任天堂の快進撃を支える典型的なライトゲーマー、
それが今ここにいるワケです。その原動力は一体何なのでしょうか。
 
そのヒントはこんなところに隠されています。
 
■電撃オンライン:インタビュー『世界樹の迷宮』
http://www.dengekionline.com/soft/interview/sekaiju/index.html
 
DSLiteで現在大ヒット中の「世界樹の迷宮」ディレクターのインタビューです。
売れ行きを予測し切れなかったため在庫切れが多発していますが、
それがなければ週間売り上げ数でも上位に食い込んでいたでしょう。
 
そのディレクターである新納さんが、こんなことを言っています。
長いチュートリアルが終わったと思ったら、
その後に長いイベントシーンなんかが始まる…なんてなると、
もう今日は寝るか、という気持ちになります(笑)。
こういうと自分が歳とったなあと思うんですけど(笑)、
そういう社会人の人も結構いるかなと。

「世界樹の迷宮」は「やり込みゲー」です。総プレイ時間からいえば
非常に長い部類に入るでしょう。しかし、ここに記されているとおり、
世界樹には前フリのイベントやチュートリアルは一切ありません。
プレイしたいときにDSLiteを開けてダンジョンへ潜り、ひとしきり
探検して満足したら戻ってきてセーブ、その繰り返しです。
 
 ワンプレイは30分でもいいのです。
 
それでもしっかり何かを目指して戦って帰って来られます。
 
 
そう、「プレイ時間」 がとても重要です。
今までヘビーなゲーマーだった層の多くは、
 
 ゲームに掛ける「時間」に糸目はつけない人々
 
でした。私も学生時代、とくに大学生のときには自由時間が山ほど
ありましたので、そういうライフスタイルが可能な人間でした。
しかし、そういう人たちだけを相手にすることの厳しさに
今ゲーム業界は苦しんでいます。大学生層はもともとゲームソフトを
大量にオトナ買いできる経済力を持った層というワケでもありません。
 
では社会人に対してゲームを売り込もうとしたとき、
何が一番ネックになるのかといえば、それがまさに「プレイ時間」でした。
話題の新作はどれもこれも「映画のようなイベント」満載、
レースゲームなどもセッティングが細かくなっていく一方です。
 
サッカーゲームで最初にやることは「フォーメーション」の設定です。
最近は11人すべての選手に細かなポジションを与えることができるようになり、
戦術も「攻撃重視」「守備重視」など1人1人指定できるようになりました。
 
・これはリアルなゲームを楽しむための進化なのか?
・それともユーザに強いる「作業」が増えたのか?
 
見方によってどちらとも言えるでしょう。ただ、いまや少ない時間で
お手軽にゲームを楽しみたい層というのが実はとても多いことが判り、
彼らにとってはそれが望まれている進化ではなかったということが
徐々に判明してきています。
 
「Wii Sports」でボウリングをして感じたことは、
とにかく1プレイの時間が短くてすむことにより、
 
 「ちょっと遊んでみるか」
 
という気分にさせられることが増えたことでした。
当然、ボウリングは1ゲーム20~21投したら必ず終わりです。
1人なら1ゲーム10分掛かりません。2人でやってもその倍くらいです。
 
物足りなければ2ゲームでも3ゲームでもやることができますが、
重要なのは時間の「最小単位」がとても小さいという部分でしょう。
 
 すぐやめられるからこそ、いつでもやり始めることができる
 
というのは、とても大きな心理効果を生み出しました。
私は持っていませんが、「nintendogs」にしても「脳トレ」にしても、
「どうぶつの森」にしても、背景は似たようなものかもしれません。
 
「Wii Sports」と同じWiiのゲームでも、私が「ゼルダ」に挫折した理由
ここにあります。ゲームを始めてみて、ひと区切りつくまでの時間が、
ゼルダはとても長かったのです。当然あらゆる場面でセーブすることは
できますが、スタートしてみて何もイベントに出会わないまま移動してセーブ、
というのはツライものがあります。だからどうしてもひと山越えるまで
頑張ろうとするのですが、それには数時間がどうしても掛かりました。
 
数時間掛かると思うと、電源を入れるのも 「覚悟」 が必要となります。
大げさかもしれませんが、社会人層にとって、時間というのはそれほど大切で、
そして慢性的に不足しているモノなのです。
 
 ゲームに掛けてあげられる時間
 
は30分から1時間程度。その間でひととおり満足できるようなパッケージ化
されたゲームがしばらく主流となっていくでしょう。たとえば「世界樹の迷宮」
を見てみると、大作の中でもその時間配分を見直そうとしていました。
ゲーム自体をお手軽にするだけが解ではありません。
一日30分、ちょっとずつ進めても楽しい、というゲームが作れれば、
全体としては総プレイ時間○○時間の大作であっても構わないのです。
 
DSLiteも、Wiiも、こうしたちょっとした合間にできるゲームのラインナップが
揃うことによって、その地位が固められているような印象を受けます。
ではこの手はPS3やXbox360にも有効でしょうか? と考えると、その前に、
 
 ゲームにお手軽を求める人は、ゲーム機に高い金を払わない
 
という前段階の壁が立ちはだかるのもまた事実です。その点でもDSLiteやWiiは
「性能よりも安さ」という戦略を取ってターゲット層に合わせてきた経緯があります。
少なくともPS3は、もはやソフトもその本体価格に見合うような大作を
つぎ込んでいくしかないでしょう。
 
ハード、ソフト、そしてその先にいるユーザ像、そのバランスはとても難しいものです。
任天堂は今、それらの要素が相乗効果を起こす大フィーバーの中にいるのかもしれません。


2007/01/28 [updated : 2007/01/28 23:59]


この記事を書いたのは・・・。
CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
ブログ「デジモノに埋もれる日々」「アニメレーダー」「コミックダッシュ!」管理人。デジモノ、アニメ、ゲーム等の雑多な情報をツイートします。




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itacchi 2007/01/29
うわー、わかるわー
uemu 2007/01/29
あぁ分かるな、、、私の最小単位の再長時間は30分が限度。世界樹も良さげだなぁ。 シレンも絶対に30分で終わるモードがあればいいのに
leva 2007/01/29
となると、ゲームはこれを機にセグメント化していくのかな。
nshash 2007/01/29
となると、ゲームはこれを機にセグメント化していくのかな。
rig 2007/01/30
一日30分、ちょっとずつ進めても楽しい、というゲームが作れれば、全体としては総プレイ時間○○時間の大作であっても構わないのです。
minus774 2007/01/30
<ひと段落・1セッションの長さがゲーム離れに繋がってるのでは という視点> 特に社会人はこれ深刻だよな 自分も音ゲー嗜みだしてから 1セッション1時間超えるようなゲームは敬遠しがちになったし
lastline 2007/01/30
FC時代はプレイ時間が決められていたな。ある意味原点回帰なのかもしれない。
fenethtool 2007/01/30
書籍「続ける技術」に繋がる話。
sigwyg 2007/02/01
あるDSLiteゲームが成功した理由
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▼ コメント ▼

No.6598   投稿者 : とおりすがり   2007年1月29日 12:41

なるほどー。
PSPをやってて、少しやってスリープを繰り返してるのを考えれば納得ですね。


No.6602   投稿者 : 和道怪人   2007年1月29日 20:52

まさしく、自分も同じです。


No.6603   投稿者 : 剣士   2007年1月29日 21:27

レース系及びミッション系が好きなのでお手軽って言われてもPS3な私・・・
画質求めた時点で選択肢が無い罠(==;

どうなんだろ、結局遊び方次第って結論っぽいが・・・
納得できない所が悲しいかな(--;

資金力ってのは言い訳な気もするんだけどな~・・・趣味の世界だし


No.6615   投稿者 : もりのなか   2007年1月30日 16:17

いやいや、PSPもPS3もお手軽ゲーム出せばいいと思いますよ。
ゲームにお手軽を求める大人は、時間は不足していますがお金は不足していません。

オーディオに8万つぎ込む瞬発力でゲーム機に6万つぎ込むこともありえます。少なくとも僕はそうかも。世界樹の迷宮みたくいいゲームあれば、ですが。


No.6650   投稿者 : いとう   2007年2月 1日 09:50

本文はWiiとDS中心に書いてるみたいなんで触れられてはいないようですが、
ソニーのゲーム機の中で、一番上に来てるのがPSPっていうのも同じ原理のような。
一番最初のコメントの方が見事に言い表してますが。


No.6683   投稿者 : 神無月   2007年2月 2日 22:21

なるほど、一区切りまでの時間が長いと電源を入れるのをためらいますね。

あとPS2とかでは電源を入れてからゲーム開始までの時間も結構気になります。何もできずにただ待つだけですから。その間に他のことをしてるとゲームを始めるのがどうでもよくなり、そのまま電源を切ってしまったりします。



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