ブログというツールの属人性 - Webで言葉を躍らせる魔術師たち

2005/12/11

日曜コラムです。こんばんは。
 
一年ほど前から「日曜コラム」と称して、普段のおちゃらけたデジモノ話
とは少しだけ毛色の違う真面目なお話を書き続けてきたのですが、
この度、その コラムを集めたものが書籍化 されることになりました。
 
すでに Amazonでも購入可能 になっていますので、宜しければお手元に
一冊常備してお暇なときにでも読み返していただけますと幸いです。
 
 
・・・
 
・・・・って、そんなわけナイナイ (ノ゜ο゜)ノ
 
書籍化のお話は 全部冗談 ですから、真面目に受け取らないように
お願いいたします。帯書きに梅田さんまで引っ張り出してきて
しまってゴメンナサイ。悪気はあったんです(?)
 
でも 「デジタル産業にトラックバック!」 というのは
いかにも出版業界にありげなアジテーションっぽくて好きです(笑)
このお話にご興味を持たれた出版社の方はぜひ右サイドメニューにある
メールアドレスからコンタクトを(ry (だからやめれ!)
 
 
さて、冗談はそのくらいにして、本題に入ることにいたしましょう。
上の書籍化のお話はただの冗談として、ブログが放つ情報発信の影響力
が次第に増していることに関しては皆さまも異論の無いことかと思います。
 
もちろん、新聞社やテレビ局のようなマスメディアと、ネットの隅で
一日1ページを生成している弱小ブログサイトとをガチンコで勝負
させるなんて、そんな無謀なことを言っているワケではありません。
ですが、時として言葉は、遠い世界の人から発せられるよりも、
近い世界の人から発せられるほうが 心に響くことがあります。
新聞の情報には半信半疑でも、友人から聞いたウワサは何だか気になる、
そんな原理がブログにも働いているとしても、不思議ではないでしょう。
 
たとえば先日、サン電子の方からレビューのご依頼を頂いたiPod用の
FMトランスミッタ 「FMIP-301」 ですが、この販売はすこぶる順調なようです。
(この製品のレビューは、私も含めて非常に多くのブロガーに依頼が出ています)
私もときどき「デジ埋を見て購入してみたけど、満足いく出来だった」という
ブログ記事を見かけることがあり、それをとても嬉しく思っています。
 
昨今はビジネスブログ・ブームとも言えるほど、
 
 ブログという新しいツールをマーケティングに活かして、云々
 
という言葉があちこちでまことしやかに聞かれるようになっていますが、
では、単なる情報発信システムとしてではなく、ブログならではの
 
 「読者との距離の縮め方」を実践できている例があるか?
 
という話になると、そうした好例を見つけるのはなかなか難しい状況です。
折角ブログというコミュニケーションツールを用いているのに、
プレスリリースにちょっと崩しを入れた程度の情報をカッチリと流しているだけ
のビジネスブログが多いことに、皆さまもすぐに気が付かれるでしょう。
 
そんな中、私が以前から注目していたのは、
 
 ブラザー社員のブログ borotherhood
 
です。私も一度このブログで取り上げたことがありますので、ご存知の方も
いらっしゃると思いますが、レーザプリンタ、複合機の販売で名を馳せる
ブラザー工業のプロモーションブログです。
 
■2005/02/02 [新登場、超小型モノクロレーザ HL-2040 と、プロモーションブログ
新登場、超小型モノクロレーザ HL-2040 と、プロモーションブログ]
 ↓(反応も頂いていたりして)
■ブラザー社員のブログ borotherhood「商品ラインナップ」
http://d.hatena.ne.jp/brotherblog/20050304#p1
 
このブログははてなダイアリーを使って運営されているのですが、
そのはてなのkawasakiさんが企画について分析している記事もご参考まで。
 
■kawasakiのはてなダイアリー
「ブラザー工業にみる、ブログを用いたプロモーション」
http://d.hatena.ne.jp/kawasaki/20050906/p1
 
このブラザーのブログは、ビジネスブログの中でもとびっきりの成功事例だと
言えるでしょう。親しみある文章力に加え、トラックバックを受けて反応記事を
立てるというマメな管理などは、他の企業も見習うべきところが多いハズです。
 
そして何より、2005年2月にスタートしたこのブログが、2~3日に1記事という
ペースを維持しながら2005年12月の現在まで、
 
 10ヶ月も同じ勢いを保っている
 
という点が特筆に価します。多くのビジネスブログが、
 
「盛り上がらなかったら情けないし、逆に炎上して手がつけられなくなる
 かもしれないから、最初は 『 期間限定 』 ってことでやってみるか。
 もし上手くいけばそのときは延長ってことで。」
 
というスタートをして、結局その限定期間内すらもネタ切れで尻つぼみとなり、
「ご声援ありがとうございました」という 形だけの円満解散 をしつつも、
 
 「ブログそのものまで消すこたないだろう!」
 
というささやかなツッコミを受ける存在になってしまうのとは
ひと味もふた味も違います。っていうかそういうブログ多いですな本当に(;´д⊂)
 
 
ブログに必要なもの、それは 『 企画内容 』 ではありません。
ブログに魂を注ぎ込むのは、『 パーソナリティ 』 です。
 
ビジネスブログのような企画が成功するかしないか、そのカギはいつでも
書き手となる「ブロガー自身の資質」が握っています。その選ばれた書き手が、
 
 Webの上で自らの言葉を躍らせることができるかどうか
 
それこそが何よりも重要なのです。確かにビジネスブログなのですから、
製品の広告をしたい気持ちは良く判ります。でも読者にとって何より重要なのは、
「読み物として面白い」という事実でしょう。ビジネスブログを書くとしたら、
2割の広告に合わせて、8割のエンタテインメントを載せていかなければなりません。
 
ところが、テキスト・エンタテインメントというものは、誰でもそう簡単に
演じられるモノかというと、実際はそうでもありません。特別なスキルが必要かというと
そこまで仰々しいものではありませんが、しかしそれなりに慣れと経験を要します。
 
先ほど私は 「Webで言葉を躍らせる」 という表現を使いました。
 
Webの上のテキストで勢いと親しみと笑いのある言葉を発することができる「人」
がいれば、ビジネスブログは魅力あるものになるでしょう。逆に言えば、書き手
という一個人の資質によって、言葉は上手く伝わったり伝わらなかったりするのです。
 
ビジネスブログを立ち上げようと思ったくらいですから、何か顧客に伝えたい
ことがあったのですよね? でもその言葉は、本当に顧客に伝わりましたか?
いや、そもそもそのブログには、魅力ある言葉を伝えてくれる「書き手」を
しっかりと選んでいた でしょうか。
 
先のブラザー工業の例は、「書き手」というパーソナリティが如何に
ブログそのものの魅力に直結するかという、良い例だったのかもしれません。
 
 
「ブログには属人性がある」 というのが私の口グセです。
 
ブログを「簡単な情報発信サイト構築ツール」としてのメリットだけで捉えて
活用するのであれば、書き手というパーソナリティにこだわる必要はありません。
しかし、「ブログで読者との距離感を縮めたメッセージを」というメリットを
活用することを考えているのであれば、それができる「書き手」には徹底的に
こだわる必要があるでしょう。Webの上でテキストを自由自在に操る書き手、
というのは他のメディアとはまた異なる資質を必要とするからです。
 
ビジネスに活用したいというならなおさら、その製品・サービスが、
 
 「製品・サービスの魅力」 = 「書き手の魅力」
 
という構図で表現されてしまう「ブログ」というツールは、
まさに諸刃の剣とも言えるでしょう。
 
さて、ブラザー工業さんとサン電子さんという、2つのサンプルが登場しましたが、
両者の戦略は全くちがいます。ここまで読まれた方はもうお判りかと思いますが、
 
 (1)ブラザー : 魅力ある書き手を 社内から選出
 (2)サン電子 : 既にあるブログ を代理の書き手としてリクルート
 
という違いです。
 
(1)の方法は、当たれば相当なメリット を享受することができますが、
逆に書き手の資質によって 「盛り上がらないまま消滅」 という
リスクも自社の看板として背負うことになります。
 
一方で(2)の方法は、いわば 安全策 といえるかもしれません。
ブログはその人の歴史を表していますから、ブログを読めばその人がどのくらい
魅力ある言葉で自社製品のことを伝えてくれるのか計り知ることができます。
辺りを見回して「既に魅力があると判明している人」を選ぶことは可能なのです。
 
私が デジモノREVIEW を運営している理由について、以前にも何度か、
 
「色々な製品について深く語れるブロガーという 『人』を見つけていきたい
 
というお話をしてきました。そして先日、デジモノREVIEWの各製品ページには、
「この製品に詳しいブログ」 というリンクと、逆に各ブロガーのページには
「このブログが詳しい製品」 というリンクが加わりました。
 
ネットには、Webで言葉を躍らせる魔術師たち が大勢います。
彼らの存在を見つけ、彼らに何を望むのか、そんなことを考えるのも、
この混沌としたネットコミュニティ・マーケティングの世界の重要課題と
言えるでしょう。ブラザー工業さんの事例やサン電子さんの事例は、そんな
ブログ・マーケティングを考える人にとっては、一筋の光明になるかもしれません。


2005/12/11 [updated : 2005/12/11 23:59]


この記事を書いたのは・・・。
CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
ブログ「デジモノに埋もれる日々」「アニメレーダー」「コミックダッシュ!」管理人。デジモノ、アニメ、ゲーム等の雑多な情報をツイートします。




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tomozo3 2005/12/12
一瞬本当かと思った<書籍 形だけの円満解散ならともかく、炎上という例も出ているわけだからもう少しの辺り企業にも学んでもらいたいもの
dodolaby 2005/12/12
「製品・サービスの魅力」 = 「書き手の魅力」
cvyan 2005/12/12
「2割の広告に合わせて、8割のエンタテインメントを」
nekotank 2005/12/12
ブロガーと仕事を結びつけるための考察
kyorecoba 2005/12/12
アマゾンの嘘リンクを手軽に作るツールがあると面白い
yorihito_tanaka 2005/12/12
「近い」は物理的な近さではない、傍から見るとWeak Tiesかもしれない
PuHa 2005/12/12
ブログは書き手の人格が命だという記事です。ブログは人生とかいってる方の言い分がより理解できた気がします。
CaramelSuger 2005/12/13
納得
kennak 2005/12/13
ブログの正しい歩き方
h5y1m141 2005/12/13
ブログを安易に捉えて便利なツールとして利用するのではなく、書き手の個性が見えるべきだよね。やっぱり
hatayasan 2005/12/14
「ビジネスブログのような企画が成功するかしないか、Webの上で自らの言葉を躍らせることができるかどうかが重要」
ktdisk 2006/09/03
"Blogで読者との距離感を縮めたMessageを"というMeritを活用するのであれば、それができる"書き手"には徹底的にこだわる必要がある。Webの上でTextを自由自在に操る書き手というのは他のMediaとは異なる資質を必要とする。
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No.1900   投稿者 : CAMUS   2005年12月12日 22:36

あはははは。なんて芸の細かいことを…。(^^;)
ホントにクリックしちゃいましたがな。
これは、是非、出版してくださいませ!(笑)
絶対買います!



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