3度の「偶然」を起こせ - ブログが記憶に刻まれるとき

2005/09/25

日曜コラムです、こんばんは。
 
先週のコラム
文字の洪水に流されない - 脳みそを支配するキャッチーなフレーズたち では、ブログ記事の タイトル の重要性についてお話しました。
そして人々の目に留めてもらうために、タイトルだけでなく本文中にも
「ピンと来るフレーズをいくつ盛り込めるか」が大切だと書きました。
 
これに対して、「北の大地から送る物欲日記」のへじほぐさんから、
トラックバックを頂きました。
 
■ブログでの発信 - タイトルでひきとめ、継続で信頼を
http://d.hatena.ne.jp/hejihogu/20050919/p1
さて、タイトルで注目を引いて記事を読んでもらうのだけが記事を
目にとめてもらう方法なのかと言うと、それだけではありません。
記事タイトルを目にしてもらうということは、どこでその
記事タイトルを目にしてもらうか?という問題があります。
  (中略)
一瞬の話題性で注目を引くってのも有効ですが、
一見で来た読者は去るときもあっという間。
しっかりした記事を継続して書くことで地道に信頼を得たいものです。

実は、はてなブックマークでも類似するコメントを頂いています。
すなわち、タイトルで気を惹くことは必要だが、中身が伴っていること
継続して発信を続けていけること、が前提になるというご意見です。
これは私もその通りだと思います。
 
「頑張って良い内容のブログを継続して書いているんだから、
 あとは 読者の気を惹くキッカケさえ あれば巧くいくハズだ・・・」
 
そういう状態であれば、タイトルで気を惹くことは有効な手段になるでしょう。
 
これは製品(サービス)の広告にも非常に良く似ています。
製品の出来と広告コストはバランスが取れていなければなりません。
良い製品なのに、知られていないために売れ行きが芳しくない、
そういう状態にこそ、広告は有効です。逆に、その製品が持つポテンシャル以上の
広告を乱れ撃ちして製品を良く見せかけようとしても
それはごく一時的な売り上げだけを残して、すぐにしぼんでしまいます。
 
そういえばアリエルの徳力さんが面白い記事を書かれていました。
 
■テレビ広告で検索サービスを離陸させることはできるのか
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=668
 
広告で無理矢理認知度を高めても、中身が伴わなければ広告を止めた途端に
元に戻ってしまう、これはとても身に詰まされるお話です。
 
ブログに於ける 「無差別トラックバック」(キーワード検索で引っかかった
ブログ全てに対して、中身を読みもせずにトラックバックしまくること)もこれに
似たものがあります。ここでは「ARTIFACT」の加野瀬さんの記事をご紹介しましょう。
 
■TrackBackによってあなたの評価は上がってますか?
http://artifact-jp.com/mt/archives/200405/tbevaluation.html
 
トラックバックを沢山打てば、特に有名なブログには積極的に打ちまくっておけば、
自分のブログの宣伝になると考えている方も多いことかと思います。ですが、
そうした「無差別広告」によってアクセスが集まるのはほんの一瞬だけです。
広告を打って引き込んできたお客様を、しっかりと満足させてあげられる
「中身」があなたのブログで待ち受けていなければ、
 
 「大量のお客様」は、「大量の失望者」に変化 してしまいます。
 
だからこそ、クオリティは大切にしなければなりません。ブログにとっては、
文章の中身もさることながら、その「発信頻度」も大切なクオリティです。
その準備が出来ていてこそ、外部への宣伝がようやく有効に活かせるのです。
 
 
さて、前置きが長くなりました。ここでは、
ブログに於ける読者の惹き込みモデル について考えて見ましょう。
 
どんなブログでも、最初は 「読者がたった1人」 という状態から始まります。
その1人は誰かって? それは勿論、ブロガー本人(あなた)のことです。
それから長い間掛けて、あなたが質の高い文章を毎日毎日継続して発信し続けて
いくとしましょう。すると読者は1人増え、2人増え、そのうちうまくいけば
数百、数千と膨れ上がっていくかもしれません。しかし、そこに至るまでに
水面下では様々な事象が起こっていることを理解したほうが良いでしょう。
 
右の図をご覧ください。
ブログのページビューは基本的に右肩上がりの 「自然増角」 を持ちます。
といっても、これはブログに限ったことではありません。
 
基本的に、ネット界全体のページ数に於ける自分の持つ ページ数比率
上昇すれば、ページビューは上昇線を描くことになります。すなわち、
ブログというツールは、ネット界全体のページ増加率より速いペースで、
自分のページ数を増やしてくことが容易にできるツールだと言えます。
だからこそ、ブログで頑張って情報発信をしている人は、大抵の場合
こうした「自然増角」に従ってページビューが勝手に増えていきます。
 
この状態は喜ばしいことではありますが、ほうっておけば、その増加ペースは
「じり足」 のままです。ですが、この自然増は、とあるキッカケによって、
その勢いを増していくことになります。それが右図中にもある 「パルス」 です。
 
継続的に書き続けているブログには、ときどきとても評価の高い記事が生まれ、
それが他の記事に比べて特に高い影響力を発揮することがあります。
そう、あの 華麗なる波状アクセス
実録!「華麗なる波状アクセス」パート2 - 直下集中型連鎖
のことを思い出してください。
それは今まで100人に向けられていた記事が1000人に、1000人に向けられていた記事が
1万人に向けられる瞬間です。このとき、今まであなたを知らなかった人たちが、
次々にあなたの記事を目にすることになります。そして、そのほとんどが 通りすがり です。
 
しかし、1回のパルスで発生したアクセスの中で、運がよければ
ごく一部の方々に 常連の読者 として残って頂けることがあります。
 
 これがパルス発生による「ベースアップ」です。
 
過去の経験からすると、パルスによって発生したアクセスのうち、
ベースアップとして残る率というのは、実に1割に満たない ものです。
掛かる苦労を鑑みれば、この比率は 非情とも言える ものかもしれませんが、
それでも、こうしたベースアップを何度か繰り返していくことができれば、
ブログの読者の規模にも目に見える変化が表れることになるでしょう。
 
それでは、逆に読者の気持ちになって考えてみましょう。
 
ブロガーであるあなたは、そもそも他のブログの読者でもあるハズです。
そしてGoogle検索、はてなブックマーク、個人ニュースサイトなどの情報源を元にして、
あなたも時には別のブログの「パルス」を発生させている1人になっています。
さぁ、先ほどの裏返しですよ。ここはよーく考えて欲しいところです。
 
先ほど、パルス発生時に「全員、読者として残って欲しい」というあなたの願いも虚しく、
9割以上の方々が1回限りの「通りすがりさん」として戻ってきませんでした。
今度は読者となったあなたは、他の方のブログを見て、やはり同じように
「非情な通りすがりさん」となるのです。そこでズバリお聞きしましょう。
 
 あなたが「1割の常連さん」のほうに転がる条件は?
 
既にいくつかのブログの常連読者になっている人も、最初にそのブログの読者に
なったワケがどこかにあるハズです。その条件とは何だったのでしょうか?
 
私はその条件を、漠然とこう考えています。
 
 「通りすがりも、3度経験すれば、常連読者になる」
 
一見、乱暴な仮定のようですが、この考え方は非常に大切です。言い換えれば、
これは、「偶然を繰り返し起こす必要性」 と表現することもできます。
 
あなたが検索やリンクを辿って、とあるブログの記事に辿り着いたとき、
あなたはそれを、まだ「ブログ」というサイト単位として認識していません。
それは目の前に現れた「1記事」であり、「1ページ」です。その中身が面白かろうと
なかろうと、あなたはその「ブログ」を継続的に購読しようとまでは感じないでしょう。
 
ところが、それからしばらくして、同じように検索やリンクを辿って、そのブログの
別の記事に辿り着いたあなたがいるとします。もし、前回の訪問が有意義であって、
その記憶が残っているとしたら、あなたはそこで
 
 「ん・・・? このブログ前にも来たことが・・・」
 
というフラッシュバックを起こします。実はこのとき、フラッシュバックが起きるか
どうかは、前回の内容評価も勿論ですが、それ以外にも、ブログのタイトルやデザイン
の印象にも強い影響を受けます。すなわち、1度目の訪問で与えた印象が大きくなければ、
2度目の訪問で「以前も来たことがある!」という印象を与えられないということです。
 
さぁ、しばらくして遂に、3度目の訪問がやってきました。あなたはここでも
「またこのブログか!」と思うでしょう。そして今までの訪問で満足した情報が
得られていれば、ここで遂に重い腰を上げることになります。
 
 「どうやらこのブログは、これからもチェックしたほうが良さそうだ」
 
・・・いかがでしょうか? この「あなたが常連読者になるプロセス」は、
そのまま、「あなたが常連読者を獲得するために必要なプロセス」でもあるのです。
互いに関連しない3度の経験 で同じブログが現れる、この3度の偶然を起こす
ことができれば、あなたのブログは「継続して購読するに値する」という評価を得る
ことができるでしょう。そう考えれば、先ほどの「パルス」と「ベースアップ」の
考え方も理解がしやすくなります。現象として一度のパルスだけを見るならば、
1割以下の読者しか残らないように見えますが、実際にはその全員に対して、
 
 「必要な3度の偶然」のうちの1度を刻み込んでいる
 
と考えることができるのです。そうした9割の方々は、また別の機会であなたの
ブログに出会ったとき、もしかしたら常連読者さんになってくれるかもしれません。
 
 
3度の「偶然」によりブログが記憶に刻まれる、そのプロセスについて考えて
きましたが如何でしょうか。もちろん、「3」という数字には特に根拠はありません。
実際は「2」かもしれませんし「5」かもしれません。しかし、いずれにせよ、
異なる複数の機会に同じブログに辿り着くという経験を経て、初めてそのブログを
継続的に購読しようという意思が生まれるということは、おそらく間違いないでしょう。
 
内容の重要性、継続の重要性、そして露出の重要性と、裏返しの危険性・・・。
こうしたモデルを頭の片隅に入れておけば、それが、あなたが望むブログの
カラーを実現するための、ちょっとした助けになるかもしれませんね。


2005/09/25 [updated : 2005/09/25 23:59]


この記事を書いたのは・・・。
CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
ブログ「デジモノに埋もれる日々」「アニメレーダー」「コミックダッシュ!」管理人。デジモノ、アニメ、ゲーム等の雑多な情報をツイートします。




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▼ はてなブックマークのコメント ▼

wacky 2005/09/26
偶然訪れたブログ読者が常連になる条件。『通りすがりも、3度経験すれば、常連読者になる。』 納得。
hejihogu 2005/09/26
3連続ヒット!! む、むずかしい・・・orz  ホームラン狙いでw
kanimaster 2005/09/26
こうして、一部のブログに人気が集中していく。
naney 2005/09/26
パルス発生による「ベースアップ」
alchymia 2005/09/26
blog
lsty 2005/09/28
あー、この記事有用かも。でも小難しく書きすぎ。大きい文字の部分だけ拾い読みすれば大体内容分かります。
AdYandW 2005/09/29
3度か…。1度目のヒットを出すのに苦労しているようじゃ駄目って事か…。
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▼ コメント ▼

No.1711   投稿者 : santaro_y   2005年9月27日 20:19

どうもです。初コメントですw
自分が常連の読者になるのは一目ぼれももちろんあるんですけど(こことかw)確かに何度か出会うというのも重要です。
ただもう一つあるのは噂ですね。記事というかブログについての噂に何度か触れると自分の中での重要度はどんどんアップします。特定の記事だけでなくブログについて語られるようになったら勝ちかなとw


No.1770   投稿者 : CK   2005年10月20日 02:05

●santaro_yさん
なるほど、ブログについて語られるというのはかなりポイント高いですね。
それと似ているかどうか判りませんが、「○○○のところでも言われているように」のように
さりげなく「○○○だったらみんな知ってるでしょ?」的な雰囲気で引用されていると、
注目度が俄然違ってくるというのもありそうです(;・▽・)



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