強制シャッフル「妄想M」思考、逆らえないコトにして。

2005/02/20

日曜コラムです。金曜から週末にかけてちょっとした用事ができてしまい、
 
「ビックカメラでDiMAGE Z5を 思わず衝動買いする予定
 
という 綿密なスケジュールがパー なのでございますが、
そこはそれ、週明けから改めて捕獲作戦を練り直すことにしましょう =)
 
 
今日は 「シャッフル再生の魔力」 についてお話します。
 
シャッフル再生(あるいはランダム再生)で音楽を楽しんでいた人は
昔から沢山いました。しかし当時こうした音楽鑑賞のあり方は
豪勢なディナーを全部ミキサーにかけて飲み込む みたいな
掟破りなイメージで見られることも少なくありませんでした。
 
 「音楽は 『アルバムの曲順』 で聴くのが一番味わい深い。
  そんなふうにかんがえていたじきがぼくにもありました。」(棒読み)
 
それがそれが、iPodの登場以来、突然シャッフル再生が脚光を浴び始め、
「シャッフルの良さとか判っちゃうのがオトナってゆっかー」
みたいな時代に突入し、遂には今年1月に登場した「iPod shuffle」が トドメ
ばかりに暴れまわったことで、晴れて「シャッフル」は市民権を獲得したのでした。
 
私もExrouge時代から時々ランダム再生を使っており、現在使用中のiAUDIO M3では
「ベスト順」と「シャッフル」を上手く使い分けられるようなフォルダ構造を
設計したりと、それなりに「シャッフル」と触れあってきたつもりでしたが、
iPodユーザの方々が仰る シャッフル至上主義 の心境がイマイチ掴めずにいました。
 
しかし最近、その心境が急激に判るようになってきたのです。
そのきっかけとなったのは、先日 BiBio wGate用として作った家庭内LAN専用の
ネットラジオ サーバに、延々とシャッフル再生をさせていたことです。
 
SHOUTcastを使ったこのネットラジオサーバは、プレイリストで指定された
数百曲のmp3を延々とシャッフル再生し続けます。一応「曲飛ばし」という
操作はあるにはあるのですが、その操作は、そのlinuxサーバにログインして
コマンドラインからコマンドを打ち込まなければならず、非常に面倒です。
 
マニアで凝り性な私は、iAUDIO M3を使っているときには、気に入らない曲が
流れてきたら 即座にリモコンでスキップ したり、その時々の気分に
合わせてピッタリ合いそうなアーティストの曲を一生懸命選択したりしていました。
しかし、このネットラジオ環境では「凝った操作をする余地」がありません。
 
 「ユーザ自ら良い曲を探す努力を、認めてくれない環境」
 
しかし 「それなりに」 好きな曲が流れてくる環境が、そこにはあります。
そうこうしているウチに私は、部屋に居る時にはいつも、BGMとしてその
ネットラジオを付けて、押し付けのシャッフル再生を楽しむようになりました。
 
「これだ。」
 
私は確信しました。
 
「私には曲を選ぶ権利はない」
 
そう 思い込むに足る理由 があれば、私は「曲選び」から開放される。。。
これこそがシャッフル至上主義のスタート地点なのだ! そう感じたのです。
 
逆に言えば、「自分ならこのシャッフル順より、もっと良い曲を選べる」という
凝り性な人に曲選択可能な環境を与えてしまうと、シャッフルの結果に納得できず、
シャッフル再生に身を委ねることができなくなってしまう、というワケです。
 
音楽に凝っている人、機器の扱いに慣れている人ほど、自分で何とかしようと
「努力」 する可能性が高いため、安易にシャッフルに委ねることができません。
しかしそんな凝り性の人でも、上記のネットラジオのように曲選択が許されない環境下に
押し込められれば、「努力の無力さ」を悟り、シャッフルを甘受できるようになります。
 
一方、そんなに凝り性ではない人の場合は、「自分で曲を選ぶほうが賢い」という
自信家な思考はあまり存在しません。そのため、がんじがらめに選曲を禁止される
までもなく、案外低い閾値で「選んでもらった結果」に満足してしまいます。
 
というわけで、私なりに考えた「シャッフル」受け入れに必要となる
なりきりシチュエーション なシナリオは、この2つのどちらかです。
 
■妄信従属的「崇拝」思考 による、シャッフルの受け入れ方
「コンピュータが選んでくれたシャッフルの曲順は、自分が選ぶよりも
 ずっと素晴らしいに決まっている。今の気分にピッタリな曲が!ほら!ほら!」
 
■被征服的「自虐」思考 による、シャッフルの受け入れ方
「シャッフルの曲順を変える権利なんて、自分ごときには無いんだ!
 だから委ねるしかない。「選ぶ努力」なんてやめちゃって楽になれ!」
 
旧来の「FMラジオ」などを聴いているときの心理状況は、まさに後者そのものでしょう。
自分は曲順選択に関与することが絶対にできない、という 自虐的前提条件
こそが、シャッフルを受け入れる大きなドライビング・フォースとなっているワケです。
 
ところで、前者の「崇拝」思考にもちょっと触れておきましょう。
 
iPodのシャッフル時のセレクションは、リスナーの気分を読んでいるかのごとく絶妙だ、
というお話を良く聞きます。しかしiPod、iTunesのようや機械にも可能な工夫とは、
せいぜい曲の年代やジャンルを判断材料にするか、目一杯頑張っても、曲のテンポを
判断材料に加えるくらいが精一杯でしょう。ユーザの心理に合わせられるワケはありません。
 
■L.P.Mさん 「iPodだからこそ。
」(iPod WeBlog)
「iPodが○○を再生してくれた。丁度聞きたいと思ってたんだよ。」
「すげぇ。今日の天気にピッタリの曲を選んでくれた。」
しかしそんなことがあるはずが無いのだ。

こちらの記事でもその点が指摘され、iPodに対する尋常ならぬ愛着がそう思い込ませて
いるのではないかというお話をされています。私も概ね同感です。
さらに加えるならば、「12時34分の不思議」と同じ現象が起こっている可能性があります。
つまり、人間は特徴のない事象よりも、特徴ある事象のほうをいつまでも覚えているため、
iPodが たまたま素晴らしいDJかましてくれた 時の印象だけが強く残って
いるのではないか、という推測です。というのも、私も時々 SHOUTcast の選曲センスに
唸ってしまうときがあるからです。SHOUTcast も 何も考えてへん ちゅーの(笑)
 
さて、このように「シャッフルを受け入れるまでの背景」をアレコレ探ってみましたが、
いずれかの背景を辿って シャッフル・ワールド にたどり着いた人々は、そこで
「選曲は自分の担当ではない」という 精神的開放感 を手に入れることになります。
しかしそこで1つ、思い出したことがあります。1年前に目にしたSteve Jobs氏の
ロングインタビューの終盤の一節です。当時訳した文章をもう一度引用してみます。
 
2004/01/15 [iPodとiTunes music storeは如何にしてクリエイタの理解を得たのか
iPodとiTunes music storeは如何にしてクリエイタの理解を得たのか]
『テクノロジーは予期せぬ結果を生むこともある。私の知る限り、テレビは最も
腐食性の高い技術だった。米国人は一日平均5時間テレビを見ているという。
テレビは受動的なメディアで、その間人間の脳はスイッチがOFFになったままだ。
だからこそ素晴らしいという面もある。でも一日5時間に値するとは思えない。』

どうでしょう。選曲を全て委ねてしまうシャッフル至上主義、このiPodが作り上げてきた
新時代のカルチャは、まさにJobs氏の指摘する 「脳スイッチOFF」 状態に
当てはまるような気がしませんか? 奇しくも1年前に氏が強烈に否定したTVと同じく、
「シャッフル」は音楽鑑賞に 超受け身なカルチャ を作り出したというワケです。
 
PodCastingのブームを見ても判るとおり、私たちは今、自分で選択するか、他人に
選択を任せるかという軸の中で、様々な快楽の可能性を探っている最中なのです。
おっと、これは音楽だけではありませんよ。そうですね、例えばニュース記事の配信とか・・・。




2005/02/20 [updated : 2005/02/20 23:54]


この記事を書いたのは・・・。
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▼ コメント ▼

No.668   投稿者 : 鳩   2005年2月21日 22:24

シャッフルですかぁ…私が車の中でM3をシャッフル再生するまでは
好きな曲をCDーRに焼いてランダムで聞いてたものでした。
CDの場合入る曲数が少ないのでどうしても順番が固定してしまうので
飽きが来ると言う理由からでした。あとは一人のアーティストに拘る事も
無かったも大きな理由だったのかもしれません(汗
その流れで今もシャッフルで聞いてます。

あとIpodがシーンにあった曲を選ぶと言う話ですが、それはあながち
嘘じゃないと私は思います。
M3での話なのですが、一人で乗ってる時の選曲と、異性を乗せてる時の選曲が
違うような気がするんですよ。
やっぱ愛情込めてM3修理してるからかな? 否、毎日触ってるから?
否、M3は状況を読めるんだ!(以下盲信的崇拝思考へ(笑


No.670   投稿者 : L.P.M   2005年2月22日 20:27

うおーやっぱり凄いこと書くや・・・
Blogのエントリも引用していただいてどうもありがとうございます。

そうなんですよね。最近手元にshuffleが無くて、MP3に対応しているCDプレイヤーをシャッフルモードにして曲を再生していたのですが、
shuffleの場合は「どうしてもこの曲を聴かないと・・・飛ばしたらダメだ~」
といういわゆる「被征服的「自虐」思考」という強制Mモードに陥ってしまうのですが、
そのCDプレイヤーでは「俺が聴きたい曲を聴くんだ!」と聴きたい曲が再生するまで
曲送りボタンを酷使するSモードになってしまうんですよね・・・笑
うん・・・何だか変なこと書いていますが色々な意味でユーザーはiPodには逆らえないと。


No.680   投稿者 : CK   2005年2月24日 01:05

●鳩さん
運転中は特にシャッフルが有効かもしれませんね。電車の中ですと手持ち無沙汰ですので
思わず自分で操作したくなってしまうのですが、運転中は運転に集中するために、
BGMの選曲は携プレに任せておく良い「言い訳」(制約)になるかもしれません(笑)
異性を乗せているときの選曲はアレですよ、ロシアンルーレットですよ!
アニソンとか流れてきたら、M3に嫌われていると思ったほうがよさそうです ∑( ̄□ ̄;)

●L.P.Mさん
こちらこそL.P.Mさんの記事を参考にさせて頂きましてありがとうございます。
「シャッフル『S』モード」よく有りますよね~( ̄▽ ̄;)
「あ、これは飛ばし! これも・・・気分に合わない、飛ばし! うーん、これも・・・」
とかやっていると、「はっ、一体何のためのシャッフルだっ!」と思ったり思わなかったり(汗
実はiPodのリモコンに液晶がないというのも、多くのiPodユーザがシャッフル派に変わっていった
大きな要因なのではないかと思います。本体を出すのが面倒くさい、という言い訳(制約)になりますよね~。



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