モノ選ビ情報戦線 - 「ヘヴィ・ネットワーク」と「ライト・ネットワーク」

2005/02/06

「日曜日はコラムの日(?)」と化してきました・・・。
 
アルファブロガーにも選出されました「NDO::Weblog」のnaoyaさんが
2005/01/23 に書かれている記事がとても面白いものでしたので、
ここでもご紹介させて頂くと共に、関連したお話を取り上ることにしましょう。
 
■NDO::Weblog 「RSSフィードはウェブ広告にとって善か悪か」
http://naoya.dyndns.org/~naoya/mt/archives/001551.html
「RSSとは何ぞや」という話をした直後に寄せられる質問・意見の多くは
「フィードを配信することで自社のサイトへのトラフィックが減ってしまう」というもの。

RSSを配信しちゃうと、RSSだけ読んで 満足してしまう回数が増えて、
結果的に自サイトのアクセス数を減らすだけ→収入を減らすだけじゃないの?
という疑問が多いということです。それに対してnaoyaさんは、以下のような
考え方で RSSの配信がサイトの利益になる ことを説いておられます。
 
==================================================
・広告クリック率はGoogle経由より Yahoo!経由 の訪問者のほうがダントツ。
 ライト層に好かれる ほうがヘヴィ層に好かれるよりビジネスになる?
 RSS配信はヘヴィ層に好かれるための仕掛けだから意味無しじゃん?
 
・いやいや、そもそもYahoo!の検索結果で上位にいくためには、Web上で他者から
 沢山リンクをもらう必要がある。リンクを張ってくれるのはヘヴィ層
 
・ライト層がYahoo!の検索結果の影響を受けるということは、結果的には
 「ヘヴィ層に認められた」ページに優先的に足を運ぶことになる。
 ライト層に好かれるには、まずヘヴィ層に好かれる のが必須条件になる。
 
・というわけで、ヘヴィ層に好かれるために、RSSを自ら進んで配信しなさい。
==================================================
(あくまで私の要約です。原文のニュアンスを是非ご確認ください。)
 
これにはすごく納得です。確かにRSSリーダをバリバリに駆使するヘヴィ層は、
広告のクリック率は低いかもしれませんが、ネット上の活動が活発なヘヴィ層に
認められれば、自分のサイトのYahoo!やGoogleでのランクは上がっていき、
結果的にライト層へのアプローチが強化される、というわけです。
 
 
さて、このお話に関連したお話を、ここでは1つお話します。
 
「ライト層に認められるためには、まずヘヴィ層に好かれよ。」
この法則は、単なるネットコンテンツの好き嫌いの話だけではなく、
マーケティングを支える情報社会全般に当てはまってきているような気がしています。
いや、以前からそうした法則は普通に存在して、普通に知られていましたが、
その傾向が最近、より顕著になってきてはいないでしょうか?
 
つまり、モノ社会の中でも、「アーリーアダプタ」たるヘヴィ層に気に入られるか
どうかが、その後「オーディナリ・マス」たるライト層に好かれるかどうかという
「主戦場」に与える影響 が巨大になってきているような気がするのです。
 
私がその兆しを感じたのは、携プレの世界でのとある出来事でした。
 
 「Apple iPod」 対 「Sony NW-HD」
 
この戦いに於けるヘヴィ・ネットワークの反応と、それを受けた
ライト・ネットワークの反応について、紐解いてみることにしましょう。
 
Sonyにしてみれば、「MP3か? ATRACか?」などというのは、
 
 ヘヴィ層「以外」には全然関係ない問題だと思っていた
 
に違いありません。だからこそ、ヘヴィ層には嫌われようとも、ライト層には
ATRACで押せ押せ攻勢 すれば受け入れられると踏んでいたようです。
そうしたマーケティング戦略は直感的にも「アリ」だと思えるでしょう。
 
ところがライト層のNW-HDへの反応は意外なモノでした。
携プレの世界にまだあまり詳しくないライト層は、ヘヴィ層での評判
を気にし始めたのです。いや、当時マニアックだった携プレに関しては、
ヘヴィ層のところにしか頼れる情報が存在しなかったというのが実情でしょう。
 
当然ヘヴィ層は、MP3に対応していなかったNW-HDを酷評ばかりしています。
そしてライト層は、「NW-HDはヘヴィ層の間ではウケが悪い」という事実を
ここで目の当たりにすることになります。NW-HDが酷評を受けているのは
もしかしたらライト層には関係のない論点でのことなのかもしれません。
しかし、モノ選びに際してヘヴィ層を頼りにしていたライト層は、
潜在的な不安に駆られ、自然とNW-HDを敬遠していった節があります。
 
つまり、「情報」という 間接的な相談相手 として、ライト層がヘヴィ層に
影響を受ける状況下であるとするならば、ヘヴィ層に嫌われるということが、
そのままライト層へのアプローチの結果にも影響を与えてくるということです。
これがモノ売りのマーケティングでも顕著になってきています。
 
一方のiPodは、一部のヘヴィ層で大絶賛される一方、そのほかのヘヴィ層の間でも
特に目立って嫌われることはありませんでした。その結果、ライト層から相談された
ヘヴィ層は「とりあえずiPodなら安心だよ」と回答することが多くなっていました。
こうしてiPodはヘヴィ層から逆風を受けることなく、ライト層の支持を得ていきました。
 
今まではヘヴィ層には目もくれず、ライト層だけを狙い撃ちにするマーケティングという
ものはもっと多かったように思います。むしろヘヴィ層とライト層には別々の
商品をあてがうことこそが「マーケティング」だというイメージすらありました。
 
しかし今はそれが以前より難しくなってきています。何故でしょう?
 
それは、ネットという 巨大な情報発信能力 を手に入れたヘヴィ層が、自らの考えを、
以前とは比べ物にならない範囲にまで伝えるようになってきたからに他なりません。
いくらヘヴィ層を避けてモノを広めようとしても、ヘヴィ層は われ先にとモノに
食いつき、徹底的な検証(ダメ出し)を行って、その結果をライト層に聞こえるように
流してしまいます。ここから逃れる方法は、もはや存在しません。何故なら、
 
 ・ヘヴィ層は、ライト層より必ず先にモノに食いつき、
 ・ヘヴィ層は、ライト層より必ず情報的影響力が強い(発信したがり屋が多い)
 
からです。すると、こんな法則が固まってきます。
 
 「ライト層に好かれたければ、ヘヴィ層の反応 とその後の影響力をイメージせよ。
  ヘヴィ層が抱いた 印象は増幅されて ライト層に伝えられるからである。」
 
実際にはここまで大げさなことでは無いのかもしれませんが、情報ネットワークの
普及によって、こうした傾向が少なくとも以前よりは強まってきていることを
認識しておくべきかもしれません。当然ながら、情報網という意味でのヘヴィ層の
活発度が、分野によって大幅に違うことも考慮に入れる必要があります。
 
繰り返しますが、ヘヴィ層がライト層に与える影響については、
マーケティングの世界では既に語り尽くされていることでもあります。しかし、
その「度合い」がもし 「情報伝播速度」に依存した法則 であると
するならば、私達が今目の前にしている社会は、各分野に於けるヘヴィ層の
影響度が加速度的に増している時期にさしかかってきているのかもしれません。
 
私が「デジモノREVIEW」を始めたのも、自分の興味のある分野に於ける
ヘヴィ層の人々の考え方を、つぶさに知りたいと思ったからに他なりません( ・ω・)


2005/02/06 [updated : 2005/02/06 23:26]


この記事を書いたのは・・・。
CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
ブログ「デジモノに埋もれる日々」「アニメレーダー」「コミックダッシュ!」管理人。デジモノ、アニメ、ゲーム等の雑多な情報をツイートします。




« BiBio wGate のためのローカルラジオ・セッティング - SHOUTcast編

トップに戻る

バレンタインに最適? 天使柄の 「iDiskTINY Luxury LOVER」 »


▼ はてなブックマークのコメント ▼



Vの数字:VTuberの配信のいまを「生配信」「編集動画」「ショート」の分類と配信時間から読み解く試み


【にじフェス】ライバーとリスナーが互いの「実在性」を確認し合った日 ~「にじさんじフェス2022」 in 幕張メッセレポート


「にじさんじ甲子園2022」熱狂を駆け抜けた1カ月。充実した「解説」がエンタメを加速する


トウカイテイオーと、#ウマ娘 でまた巡り逢った。テイオーを追ったリアルタイムの記憶。


映画は2回目が面白い! 僕らは鑑賞者という名の「共犯者」 ~映画鑑賞に於ける慣れと鑑賞技術の関係


「爆音上映」と「辛口ブーム」、映画の上映に於ける音量のラベリング


日本シリーズの最後のシーン(西岡選手の守備妨害)の解釈と、スポーツのルールとコントロール


モノクロレーザーのある生活 - とりあえず印刷(だ)して持って行く習慣


「スマートビエラ」が踏み抜いたというARIBの「放送の一意性確保」ルール


終わってしまった「Amazonガチャ」のサービス検証 - 変われる道はあったのか?


ドリフの思い出と"おとうさん"の言葉 - 「俯瞰的錯誤」のお年頃


「同い年の選手」が引退するニュース、そしてアニメの中の「おじさん」

ピックアップタグ




ブログ内検索



▼ コメント ▼

No.492   投稿者 : とおりすがり   2005年2月 7日 10:43

最近ベネッセの小学生を対象にしたアンケートで、sonyは不良品が多いってイメージがあるとか言うニュースを見て、ネットの噂の威力を感じました。


No.590   投稿者 : CK   2005年2月 8日 10:39

●とおりすがりさん
はぅあ、それは初耳でした。興味深いというか何というか・・・。アンケート内容にも興味が湧きますね(^_^;A"
(Googleで「福武 小学生 ソニー」で検索すると色々出てきました・・・うーむ。)
 
どんなメーカも多かれ少なかれ叩かれるポイントはあると思いますが、それが小さな噂で終わるか
一斉に火がつくかという境目は、普段から好かれているかどうかに因るのかもしれません・・・。



★コミックダッシュ! 10,000人突破ありがとうキャンペーン!(9/18~10/23)
 
デジモノに埋もれる日々 : (C) CKWorks