GSR初音ミクAMG「スパ24時間」は予選クラッシュ→2号機で参戦→貰い事故の大波乱。決して諦めないGSRスピリットを感じた初挑戦

2017/08/02


 
グッドスマイルレーシング 初音ミクAMG 初の海外遠征、
スパ24時間耐久レース、予選、決勝ともに思わぬ展開の連続で
色々な意味でどったんばったん大騒ぎの展開となりました。
 
■2017/07/28 [GSR初音ミクAMGが「スパ24時間耐久レース」に挑む!世界に羽ばたくミクカーを目に焼き付けよう!
GSR初音ミクAMGが「スパ24時間耐久レース」に挑む!世界に羽ばたくミクカーを目に焼き付けよう!]
 

パレードではその派手な "Manga" カラーリング と小林可夢偉さんという
欧州でも知名度抜群のF1ドライバーを擁する体制で注目を浴びることとなった
GSR初音ミクAMG。その一方で欧州のチーム RAM Racing のマシンを借りての
レースとなった今回、セッティングが全く決まらずにアンダーステア地獄を
解消することができないまま、予選当日の練習走行でも51番手タイムと
苦しみながらの状態で予選本番に挑むこととなりました。
 
その予選で悲劇が起こります。

オールージュを駆け上がろうとした初音ミクAMGが、突然フラフラッと
バランスを崩して 完全に制御不能 となり、高速で滑ったまま右側の
タイヤバリアに激突してしまいました。
 
メカニカルなトラブルで制御不能となったとのことで、ステアリングを
握っていた小林可夢偉さんは幸いにもご無事でしたが、マシンは
リア周辺が完全に大破。ウィングから足回りまで全てダメージを受け
てしまっているような状態で、修復は絶望的 となってしまいます。

グッドスマイルレーシング初の海外チャレンジは、なんと決勝レースに
出られることなく幕を閉じてしまうのか・・・そんな絶望感が漂っている中、
代表の安藝さんをはじめとするスタッフの皆さまは「決して諦めない」と
いうメッセージを発信し続けていました。
 
しかし肝心のマシンがこの状態でどうしようというのか・・・、
と不安に思いながら見守っていたところ、

なんということでしょう! 新車が! 新車が・・!?

なんとAMGの協力の下、別の車両を急遽準備するという驚きの展開!
 
本来、スパ24時間耐久レースには、事前登録した車しか出場することは
できず、途中のエンジン交換なども認めないという規定があります。
したがって大破した時点で「DNS」(スタート不可)で終了となる
はずなのですが、おそらくGSR安藝代表が必死に交渉された結果、
この代車で参加する 「特例」を認めて もらうことができたのです。
 
この特例を認めて頂いたレース運営母体SRO、そしてわずか半日で代車の
融通をしてくださったAMGには感謝の念しかありません。ですが、
その特例をねじ込むことができた一番の理由は何よりも 「ここで諦めたくない」
という安藝代表をはじめとするGSRスタッフの熱意の賜物といえるでしょう。

運営との交渉、AMGからのマシン調達、特例出場のための嘆願書の準備、
唯一のミクらしさを残すための 「左ドア」の移植、そしてできる限りの
ロゴの貼り付けまで、この一夜はGSRにとって本当に長い長い夜になった
ことと思います。そうして出来上がった 「スパ仕様 GSR初音ミクAMG 2号機」
で決勝の舞台に挑むこととなりました。

この新車調達に於いては「AMGと協力して」という事情からまるまる
新車購入ぶんの金額が掛かったのかどうかはわかりませんが、
この 支援のための個人スポンサーコース も急遽新設されました。
新車調達もそうですが、初号機の修理にもお金が掛かるのですよね・・(汗

私も僭越ながらこの支援コースに応募させていただきました。
何よりも、SUPER GTの世界ではすでに王座経験者として君臨している
GSR初音ミクAMGが、王者という肩書きが通用しない欧州のレース世界で
またこうして 「チャレンジャー」 として戦っている、ということに
あのSUPER GT初参戦の頃を重ねずにはいられませんでした。
 
多くの個人スポンサーの方々がこの支援コースに同意して「一口乗って」
くれたのも同じ想いからだと思います。実際問題としてここで集まった
資金の総額はおそらく新車調達や修理費には遠く及ばないでしょう。
しかし、これだけ多くの人が応援しているんだ、諦めないで欲しいと
思っているんだ、という熱量は伝わったのではないかと思います。
 
 
こうして大波乱の結果、GSR初音ミクAMGはなんとか決勝レース出場に
こぎつけることができました。しかし、予選中の大破、そしてマシン交換
という規定違反の状態ですので、決勝レースは運営より、
 
・ピットスタート(最後尾)
・レース中に +120秒のペナルティストップ 義務
 
が課せられることとなりました。
 
この時点で優勝を狙うのは難しいということになってきますが、
そもそもとしてセッティングもまともに出せていない新車で走ることに
なりますので、とにかくまずは 「24時間レースを完走する」 ことを
大目標として進める形となりました。

一方で怪我の功名というか、マシンのフィーリングは実は初号機よりも
2号機のほうがずっと良い、という声が可夢偉さんや谷口さんからは
聞かれていました。この手のマシンは同じ型番であればみんな同じという
わけではなく微妙な当たり外れが存在し、コンマ数秒を争うレースでは
それが致命的な差になったりします。また、初号機はかなり使い古された
機体でしたが、2号機はレース車としては新品同様、ということもあってか、
レースペースはかなり期待できるのではないか、という声もありました。


そして日本時間 7/29 23:30~、いよいよスパ24時間耐久レースのスタートです!
 

GSR初音ミクAMGは、ピットから最後尾でスタートすると、すぐさま+120秒の
ピットストップペナルティも消化し、1周遅れ状態になってからあとは前だけ
を見てレースを進めるという戦略をとりました。とにもかくにも目標は完走です。

65分に1度ピットインしなければならない、というスパ24hレースのルールがあり、
ほぼ1時間ごとにピットに入ってくる初音ミクAMG。ただ、ドライバー交代は
毎回行われるわけではなく、1人が2スティントを担当して交代、というペースを
繰り返しました(そうしないと間が空かなくて仮眠もできない)。
 

 
00号車GSR初音ミクAMGは、
 
可夢偉さん×2、片岡さん×2、谷口さん×2、可夢偉さん×2、、
 
という順番でレースを確実に進めていき、谷口さんが担当するスティントの
後半あたりからはナイトレースに突入。最後尾63位からのスタートだった
初音ミクAMGですが、途中下位のチームを追い抜いたり、上位チームで
リタイヤが出たりといったことを繰り返していくうちに、順位は35位付近まで
上がっていきました。何もかも突貫で整えた体制でほとんど練習走行も
できないまま突入した決勝レースにしては上々も上々の出来栄えです。

しかし夜も更けきった現地時間am 3:10頃(日本時間am10:10頃)、
レースは10時間40分になろうかというところで、
00号車初音ミクAMGに 悲劇の瞬間 が訪れます。
 

 
アウディ3号車と激しく接触して コースアウトする初音ミクAMG。
 
最初このシーンをリアルタイムで見たときは、真っ暗闇の中の出来事
ということで、アウディと当たった車が何であるか視認できませんでした。
ただ、何となくAMGっぽいということだけがわかっていたのですが、
どうか00号車でありませんように、と祈るしかありませんでした。

しかし、その1~2分後にはこれが00号車であることが判明し、
スタッフのツイートからも フロントを大破して 修理を
試みているという情報が流れてきました。何ということだ・・・ orz
 

 
スパの最終コーナー、バスストップ・シケインで事件は起こりました。
初音ミクAMGの前に1台別の車がいて、ステアリングを握っていた
片岡さんはこれを少し大きめに避けるように外側を走行していました。
 
ところが、初音ミクAMGより上位を走っていたアウディ3号車が初音ミクAMGを
周回遅れとしてパスしようとした瞬間、前にいたもう1台に追突しそうに
なったのか、急に進路を変えようとした瞬間に完全に横滑り状態となります。
 
結果的に00号車初音ミクAMGは、3号車アウディとはまるまる1台以上ぶんの
距離を取っていたにも関わらず、完全に真横を向いて横滑り してきた
アウディに横からヒットされるという 貰い事故 により、予選に続いて
決勝レースでもマシンを大破させてしまうこととなってしまいました。。。

最終コーナーでのクラッシュで、片岡さんがなんとかマシンをピットロードまで
持ってきて修理を試みますが、マシンはフロント部分を完全に失っており、
カウルだけでなくシャシーそのものへのダメージが大きく、修理してレースを
継続できる状態ではとてもありません。残念ながら完走の夢は叶わず、
初の24時間耐久レースは 10時間40分リタイヤ でその幕を閉じたのでした。。。

24時間という長いレース、途中他車の軽い追突を受けたりもしながら
10時間40分まで小さなトラブルだけでなんとかやり過ごし、
順調に 最高28位付近まで 上がってからの、貰い事故でのリタイヤ。
本当に無念としか言いようがありません。
 
ですが、こういうことが起こるのもまたレースです。
同じように理不尽な無念を受けたチームは他にも沢山います。
24時間耐久レースという過酷なステージで完走することの難しさを
骨身に沁みて分からせてくれたレースでした。
 
しかし一方で、日本のファンの期待だけでなく、海外のレースファンからの
熱い視線を受け、予選の絶望的なトラブルから諦めずに復活にこぎつけたGSR、
ドライバーの谷口さん、片岡さん、可夢偉さん、そして監督の右京さん、
代表の安藝さんの レーシングスピリット には、多くの方々が一緒に熱くなった
ことと思います。結果は残念なことになりましたが、J SPORTSの解説陣や
日本のレース関係者の方々からも、このチャレンジには大きな賞賛が寄せられました。

スパ公式アカウントも言っています。「来年もまた来てくれよな!」
 
日本のSUPER GTチャンピオンとして、また欧州では珍しすぎるであろう
その「Manga Power」カラーリングのGSR初音ミクAMGが、スパで与えた
インパクトはベルギーの地でも決して小さくなかったものと思います。

■GOODSMILE RACING & Team UKYOのスパ24時間挑戦は無念の結果に。『"痛い刺激"をもらった』
http://www.as-web.jp/supergt/147980
 
こちらのレース後のインタビューには、いくつも印象的な言葉が並んでいます。
 
僕たちよりも速い人たちがたくさんいて、それはとてもありがたいこと。彼らから吸収することができれば、僕たちはもっと速くなれる。その意味では『痛い刺激』をもらいましたね。」
と語るのは谷口さん。SUPER GTでは誰にも負けないというチャンピオンの自負を
持って戦っているベテランのキングが、この年齢でなお「もっと上を目指せる」という、
この言葉を引き出すほどに今回のチャレンジが刺激的だったということでしょう。
 
「でも厳しい言い方をすれば、24時間レースだからこそ、"勇気をもって守る"ことが大事なときもある。『好事魔多し』じゃないけど、いいペースで走っているときにそういうことがあったりするから。ホントは(監督の自分が)もっと口を挟むべきで、ペースが良くなってきていたときに、もっときびしく言うべきことを言うべきだったのが僕の仕事だったのかもしれない」
右京さんはあのどうしようもない「貰い事故」ですらも、何かできたことがまだ
あるのでは、と語ります。普通に考えれば「いやあれはどうしようもないでしょう」
と思うしかないのですが、「夜間は他車がミスする確率も高いのだから、
通常の何倍も距離を取って保険をかけてね」と徹底することで、アクシデントの
可能性を少しでも減らすことができた、ということなのでしょうか。
「もっと出来ることはあった」 と何かを探し続けることがスピリットの表れです。
 
「どうレースをマネージメントするかという部分の経験不足というか、世界トップクラスの24時間レースで丁々発止やっている人たちとのコミュニケーションをもっと積み上げないといけないのはありますね。『ヤバいところに来ちゃったな』というのは途中からうすうす感じていましたが、そのとおりでした」
こちらは逆に、普段の安藝さんからは想像できないような言葉が飛び出しました。
安藝さんはどんなときも常に「やるからには勝つ」という熱意の塊みたいな方で
それがGSRというツワモノぞろいのドライバーや監督・クルー・スタッフを
まとめ上げる原動力となっているものですが、その安藝さんをしても、
スパ24時間耐久レースの空気に 「ヤバさ」 を感じたというのは興味深いところです。
 
もちろんSUPER GTも同じくらいヤバい面々が揃ったトップカテゴリではあるのですが、
SUPER GTは日本国内ということで事前に出来る限りの準備も情報収集もできますし、
自分のチームのドライバーもクルーも日本のコース特性を知り尽くした猛者ばかりです。
 
しかしスパはGSRにとって 完全な「アウェイ」 であり、スパをホームとして限界まで
煮詰めてきたライバルたちを向こうにまわして戦うのがどれだけハードなチャレンジ
であるか、今回の件でスタッフのみならず我々ファンも思い知らされたことでしょう。
 
だからといって、引き下がるGSRの面々ではありません。このインタビューからも
にじみ出ているとおり、ドライバーも監督も代表も、「負けず嫌いNo.1」みたいな方
ばかりです。海外チャレンジをこのままで引き下がれるとはとても思えません。
 
もちろん、そう簡単ではないことは理解はしております。
実は今回のGSRのスパ24hチャレンジは、「メルセデスAMG 50周年」の
一環として提案を受けたものであるというお話が挙がっています。
来年以降そうしたきっかけや支援もなく 「本当に単身で」 乗り込んでいく体制が
作れるのかというと、今年よりもはるかに難しい問題になってくるはずです。
 
 
でも我々はいますでに一度この、
「海外レースへのチャレンジ」という夢を 見てしまいました。
 
 
いつの日かGSRの、初音ミクを纏ったGTカーが、スパ24時間やニュル24時間などの
レースで大活躍する日がくることを夢見て、これからも応援し続けたいと思います。
 
 
また、そういう意味では来年2018年からは 「鈴鹿10時間耐久レース」
というのがSUPER GTとは別の枠組みで開催されます。
 
■鈴鹿10時間耐久レース | 鈴鹿サーキット
http://www.suzukacircuit.jp/10h/
 
これは今回のスパ24hを主催するSROとSUPER GTのGTAが組んで行う
「GTカーの世界統一戦」 を目指すレースイベントで、今回のスパ24hに出場した
ブランパン・シリーズの参加チームも数多く招待されることになりそうです。
GSRも当然、参加を検討していることでしょう。そうなると今度は彼らを
ホームで迎え撃つ一戦が実現するということです。こちらも期待大ですね。
 
今年で10シーズン目、来年は文字通り10周年となるグッドスマイルレーシング、
彼らは「GT300のトップチーム」であることだけで満足している方々では
ありません。これからも色々なチャレンジを見せてくれることでしょう。
 
ファンと共に走る初音ミクGTプロジェクト、これからも目が離せませんね!

そして はるかベルギーまで応援に 行かれた個人スポンサーの皆さまも
本当にお疲れ様でした! ファンの方々の中にもこうした強いスピリットがある
からこそ、GSRは10年経った今も面白いプロジェクトでいられるのだと思います。

デジモノに埋もれる日々」と「コミックダッシュ!」は
GSR初音ミクGTプロジェクトを応援しています!


2017/08/02 [updated : 2017/08/02 02:12]


この記事を書いたのは・・・。
CK@デジモノに埋もれる日々 @ckom
ブログ「デジモノに埋もれる日々」「アニメレーダー」「コミックダッシュ!」管理人。デジモノ、アニメ、ゲーム等の雑多な情報をツイートします。




« GSR初音ミクAMGが「スパ24時間耐久レース」に挑む!世界に羽ばたくミクカーを目に焼き付けよう!

トップに戻る

さくらの専用サーバ「第5世代」に乗り換えかつストレージSSD化、嘘のように消えたIOWait・・! »


▼ はてなブックマークのコメント ▼



超過酷なスパ24hレース決勝、GSR×Fate号は無念のリタイヤ、プロメア号は見事な3位表彰台!


GSRと「Fate」のタッグが挑む「スパ24h」に「プロメア」「初音ミク」も参戦!決勝レースは見逃せない!


GSR初音ミクAMGが「スパ24時間耐久レース」に挑む!世界に羽ばたくミクカーを目に焼き付けよう!


「グッドスマイルミーティング 2024 Vol.1」公式テストの振り返りとRd.1岡山の展望です。


グッドスマイル初音ミクAMG 2024年シーズンのマシンデザインお披露目! in ワンダーフェスティバル2024[冬]


今度のレーシングミクは「魔女ミク」?! 2024年グッドスマイルレーシング体制発表。イラスト担当はモグモさん


決死のタイヤ無交換作戦を敢行するも・・SUPER GT 2023 Rd.8 モビリティリゾートもてぎ 決勝日のツイートまとめ


初音ミクAMGは僅差ながら予選10番手、SUPER GT 2023 Rd.8 モビリティリゾートもてぎ 予選日のツイートまとめ


「グッドスマイルミーティング 2023 Vol.8」Rd.7大分の振り返りとRd.8もてぎ展望、そして「初音ミクKYOJOプロジェクト」について


「グッドスマイルミーティング 2023 Vol.7」Rd.6菅生の振り返りとRd.7大分の展望です。


「グッドスマイルミーティング 2023 Vol.6」Rd.5鈴鹿の振り返りとRd.6菅生の展望です。


「グッドスマイルミーティング 2023 Vol.5」Rd.4富士の振り返りとRd.5鈴鹿の展望です。

ピックアップタグ




ブログ内検索



▼ コメント ▼


★コミックダッシュ! 10,000人突破ありがとうキャンペーン!(9/18~10/23)
 
デジモノに埋もれる日々 : (C) CKWorks