Wisdom of Crowds は「衆愚政治」? いやいや、「天才の良いトコ取り」です。
2006/07/09日曜コラムです、こんばんは。
梅田さんの本がまた出るそうです。
といっても5年前に出た「シリコンバレーは私をどう変えたか」の文庫本化で、
5年前との情勢の違いを若干加筆したものというお話ですが、
■「シリコンバレー精神」(ちくま文庫、8月10日発売)
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060709/p1
買ってね買ってね。アインも買うよね。
梅田さんの主張を指して 「未来を読む」 みたいな言い方をされる煽り方が
マスコミ各所で散見されることもあって、最先端を行くギークな方からは
「梅田さんは意外とワカってない」的な批判が出てくることも多いのですが、
梅田さんが首尾一貫して取ってきたポジションを考えれば、そこにそれほど
矛盾はありません。梅田さんは常に、
「判ってない人に判らせるにはどう表現すれば良いか」
ということに頭を使ってきた方です。その手法は当然、「判っていない人にこそ
しっくりくる言葉」を如何に巧みに使うか、ということに繋がってきます。
ちょうど最近、東洋経済でWeb2.0の特集 がありました。
■週刊東洋経済6/24「これ1冊で充分! 35歳からの「Web2.0」」
http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/2006/0624/index.html
梅田さん、羽生さん、野口悠紀雄さんなど、財界に受けのよさそうなメンバーが
並んでいて、個々人としては興味深いインタビューが並んでいます。
全体としてのまとめ方はギークにとっては多少「うわー・・・」という感じが
あるでしょうが、その「うわー・・・」具合を感じ取るためにも読んでおいて
損はないかもしれません。
さて、そんな エグゼクティブなシニア層 との溝に関して、
ちょっと気になるブログ記事がありました。
■小野和俊のブログ「全共闘世代30人と Web 2.0 を語り合う」
http://blog.livedoor.jp/lalha/archives/50114645.html
アプレッソの小野さんが、60歳前後のIT企業経営者 を集めてWeb2.0の
勉強会を開いたという面白い記事。60歳前後とはいえ、「IT系企業」の
経営者であることに注意してください。少なくとも世間的に言えば、
Web2.0の「当事者」に一番近い立場でなければならない方々だと思われます。
(※「当事者」そのものではない)
ここでいくつか挙げられているものに対する反応が面白いので、
ちょっと長めですが引用させて頂きます。
受け入れられていた概念
・Rich User Experiences、Ajax
→ Web でここまでできるのはすごい。ビジネスの幅や発想が大きく広がる。
・SaaS(Software as a Service)
→ インストールが不要なのはとても良い。
・マッシュアップ
→ Google Map を利用したアプリケーションがこんなに簡単に作れるなんて感動的。
・Software above the Level of a Single Device
→ 息子も iPod 持っててあれは便利だと思う。PC だけでなく色々なデバイスを考慮していくのは良い。
受け入れられていなかった概念
・Google への高い評価
→ Google 八分に代表されるように、権力の集中は極めて危険。
・Wisdom of Crowds
→ ただの衆愚政治。
私がこれを見て、パッと見で感じたのか以下のような印象でした。
■受け入れられていた概念
→ 「新しいことが出来るようになった」 ことへの期待感
■受け入れられていなかった概念
→ 世論やコミュニティを機械で操作 することへの嫌悪感
ネットの上で新しい世論が形成されるんですよ! などと言おうものなら、
どんな反論をまくしたてられるか判ったものではありません(´・ω・`)
実際に小野さんも戦ってみて「撃沈」されたようですし。
コンピュータが処理する対象データとして最も注目集めているのは、今や
「人間の知識」と「人間の気持ち」というデータ
です。ここにシニア層との1つの断絶があるような気がしています。
上記のRichUIやマッシュアップの項を見てください。彼らは仕組みとしての
新しさには強く反応します。しかし、そこにある「データ」が面白い、
という話には飛びついてきません。
今まではコンピュータは帳票の数字しか計算することができませんでした。
しかしこれからは、コンピュータが「人間の気持ち」を代弁するようになります。
実際に人間は、ネットで互いの気持ちを通じ合わせることに悦びを見出したのです。
ネットコミュニティは、Web2.0は、
「概念」であって、「技術(テクニック)」ではありません。
全く同じような仕組みでも、誰のどんな「気持ち」を集めるかによって、
面白さが全く変わってきてしまいます。そして誰のどんな「気持ち」を集めるか
によって、どんな仕組みならそれが集まるか、という前提も変わってしまいます。
「これからはWeb2.0的にロングテールをマッシュアップしないとね」
みたいな話(?)が出てきたら要注意です。その人は本当にネットの上に
散在している「人の気持ちというデータ」に注目していますか?
他人の気持ちを知ることこそがキラーアプリなのだ、という感覚は、なかなか
簡単に実感することができません。それがWeb2.0以前にネットコミュニティの本質であり、
判っている人は10年前のパソコン通信から実感していて、判っていない人は
2006年になってもまるで実感の湧かない、重要な「断絶ポイント」なのです。
さて、最後にもう1つ。小野さんの記事に戻ってこの部分について。
・Wisdom of Crowds
→ ただの衆愚政治。
これ、とてもよく使われる反論句です。
Wisdom of Crowdsの部分的な弱点をうまく突いています。
こんなとき、私はこう言い返すことにしています。
========================================
Wisdom of Crowds は、みんなの平均を取るんじゃないですよ。
みんな1人1人の得意分野が違うのに、わざわざ平均を取ったら
衆愚になるなんてのは当たり前です。Wisdom of Crowds っていうのは、
『 天才の良いトコ取り 』 ですよ。
場面によって「それを一番良く知っている人」は違うんです。だったら、
その時その時で、一番良く知っている人の意見を聞いたらいいじゃないですか。
そうすればその結果は、大量の にわか専門家の知の集約 になるんですよ。
ひとまず納得はできましたか? じゃあ、このことを念頭に於いて、
「Wiki」 を見てください。「Q&Aコミュニティ」 を見てください。
========================================
多分 Wisdom of Crowds は、紐解けばもっとフクザツな概念です。
・・・でもいいんです。説明は相手に判りやすい言葉であることを優先してください。
そう、当の私たちだって、ネットが何であるか、何をもたらすのか、
まだまだ何も判っていないのですから。ただ、面白い。そう、面白いんです。
2006/07/09 [updated : 2006/07/09 23:59]
この記事を書いたのは・・・。
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Web2.0を『人間の知識・気持ちのデータ化』という視点で評価。「Wisdom of Crowdsは衆愚政治」という主張への切り返し。
「みんな1人1人の得意分野が違うのに、わざわざ平均を取ったら衆愚になるなんてのは当たり前です。Wisdom of Crowds っていうのは、『天才の良いトコ取り』ですよ」
「その時その時で、一番良く知っている人の意見を聞いたらいいじゃないですか。そうすればその結果は、大量の にわか専門家の知の集約 になるんですよ。」
「他人の気持ちを知ることこそがキラーアプリ」「にわか専門家の知の集約=天才の良いトコ取り=Wisdom of Crowds」
Wisdom of crowds のお話
Web2.0はよくわかんないけど、いいとこどりって既にいくらか始ってないか?
Web2.0に古い世代が抵抗感を感じる理由は、「世論やコミュニティを機械で操作 することへの嫌悪感」か。
Wisdom of crowds について ポジティブシンキング
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