「着うたフル」のアタリ価格とは

2004/11/08

・KDDI、第3世代携帯電話向けに音楽配信サービスを開始
 http://japan.cnet.com/news/com/story/0,2000047668,20075111,00.htm
・「携帯はiPodを超える」~auが狙う音楽配信ビジネス
 http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0410/13/news031.html
・「着うたフル」に関する5つの疑問
 http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/0410/27/news052.html
 
10月の初旬頃は、auの「着うたフル」の話題で持ちきりでした。
非常にどうでも良い突っ込みで申し訳ございませんが、
 
 iPodよりもウチのほうが! iPodよりもウチのほうが!
 
どこぞの老舗メーカも 声を荒げていたような気がしますが、
この業界、各社ともiPodに相当な劣等感を抱いているのでしょうか(´~`)
 
皆さま既にニュースで隅から隅までご存知のことと思いますが、「着うたフル」とは
音楽を丸々1曲ケータイでダウンロードして聴けるケータイ音楽配信サービスのこと。
 
HE-AAC 48Kbps のデータで1曲約1.5MB、これを30~40秒かけて
ケータイにダウンロードします。定額プランですので通信料金は気にしません。
配信楽曲数は当初1万楽曲程度、1曲の価格は数百円で曲によって違うとの発表に
なっていますが、どうやら 1曲300円 あたりになりそうだとのこと。
 
miniSDカードへの保存が可能で、コンテンツはCPRMで暗号化されます。
機種変の際には同電話番号であればデータも移行させることが可能です。
「着うたフル」に関しては、このくらいの情報を知っていればOKでしょう。
 
さて、「着うたフル」にはどんな未来が待っているのでしょうか。
ケータイへのダイレクトな音楽配信には、私も非常に強い興味を持っています。
「PCを使わざるを得ないiPodは難しい、ケータイで即買えるなら簡単だ」
というauの説明もうなずけるところです。
 
しかし、ここには1つ大きな前提条件が抜けています。iPodと着うたフルが、
 
 同じ「音楽商品」を扱っている前提であれば
 
という条件です。この条件はモチロン、成り立っていません。iPodで楽しめる
「音楽」と着うたフルで楽しめる「音楽」は そもそも別物なのです。
ビットレートが違う? いやいや、それは些細なことです。着うたフルで
ダウンロードするのと、CDを買ってiPodに入れて聴くのでは、ここが違います。
 
着うたフルは、
 (1)「ケータイ(1機)でのみ再生 できる音楽」を買う
 (2)「メモリが一杯になるたびに捨てなければ ならない音楽」を買う
 (3)「キャリアを変えたら全て捨てる ことになる音楽」を買う
 
というサービスです。逆に言えば、
 「音楽を自分の物としてコレクションできる可能性は捨てなさい」
 
というサービスだという言い方もできます。
 
まず(1)ですが、着うたフルで購入するのは、ケータイの中から外へ
一生持ち出せない音楽です。部屋のコンポで聴きたいと思ったとき、
ケータイのミニジャックをコンポに繋げる姿を想像してみてください。
 
次に(2)ですが、大量のコレクションを持つことができない音楽です。
どうしても捨てたくなければ miniSDを沢山買って挿し替える
しかありませんが、費用対効果が割に合わないのは自明でしょう。
 
最後に(3)ですが、電話番号が変わったら無に帰す 音楽です。
もしauが割高に感じる時代が来ても、購入した音楽を捨てたくなければ
キャリアを変えられません。これは音楽を買っているのではなく、
ケータイ業者の有料サービスなのだということを覚えておく必要があります。
 
ちょっと説明が長くなりましたが、ここで申し上げたかったことはただ1つ。
着うたフルは、「1曲あたりの値段は数百円」という言葉によって、まるでCDと
同じ「1曲」を購入できるような錯覚を起こさせていますが、実際に着うたフル
で購入できる音楽は、上記の通り、CDと比べると 楽しみの幅が
著しく狭い 商品だということです。ちょっと過激な言い方をすれば
 
 美味しいラーメン屋とカップめん、どちらも1杯 800円!
 
というくらいのショッキングな価格設定に見えて仕方が無いのです。
 
では 着うたフルの「アタリ価格」 はどれくらいでしょう?
「アタリ価格」とは私の造語ですが、消費者が躊躇せず商品購入に踏み切れそうな
しきい価格をこう呼ぶことにします。着うたフルが音楽に現状のキツイ制限を
掛けたままだと仮定した場合、私の考える着うたフルのアタリ価格(商品価値)は、
 
 1曲100円以下
 
が妥当なセンだと考えます。捨てるつもりで買う 一過性の商品 に対して
払える限度はこの辺りでしょう。もし1曲300円なら、3曲くらいまではホイホイ買う
かもしれませんが、10曲くらい買ったところで馬鹿らしくなってやめてしまうかもしれません。
(「どうせ○○○したら パー だし」という心理が働くことは想像に難くありません)
 
逆に上記(1)(2)(3)のような制限を取り払って、恒久的に保存して
楽しめるような音楽商品に変えてくれるのであれば、それは
300円/曲でも高くはないかもしれませんが、おそらくそれは有り得ないでしょう。
何故なら、配信業者はみな、一過性のものを高く売りつけることを望んでいるからです。
 
一過性の商品なら安く、恒久保存商品なら高く、という前提は不変のものです。
そして着うたフルの「音楽」という商品は、まぎれもなく一過性のものなのです。


2004/11/08 [updated : 2004/11/08 16:52]


この記事を書いたのは・・・。
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▼ コメント ▼

No.132   投稿者 : ねこはち   2004年11月 9日 09:50

現状の着メロとかでも、月額200円、300円で数曲。容量の違いこそあれ保存は必須。
それでも多数のユーザーが現状に甘んじているなら、着フルも受け入れられてしまうのでしょうね。
 私的には、いつでもどこでも好きな曲を定額で、ダウンロードせずに聴けるのが理想なのですが、DDIポケット辺りがやってくれないかなと思うのですが・・。


No.133   投稿者 : uni   2004年11月 9日 12:33

お久しぶりです。

『アタリ価格』についてはまさしくそうでしょうね。
価値相応の価格じゃなきゃ不満が出るのは当たり前で、
どうしても強DRMの一線を越えられないのなら、捨て値(100円以下)にするのは妥当でしょう。
それができないのならビジネスとして成り立たないでしょうね。

現状はそれがわかってかわからずなのか・・・不思議な業界です。

ところで話は変わりますが、もう少しここの字を大きくすることはできないでしょうか?
デザインはいいと思うのですが、め・・・目が。。


No.134   投稿者 : uni   2004年11月 9日 12:35

あ、考えてみたら自分でフォント設定変えれば良いのか。
失礼しました。。orz


No.137   投稿者 : CK   2004年11月 9日 18:20

●ねこはちさん
たしかに、着メロの延長としては悪くないビジネスだと思いますね~。
ただ、この着うたフルを受け入れる層は、今までCDなどをそれなりの量買い込んでいた
いわゆる「音楽ファン」の層とは明らかに違う層になりそうな予感がします。
「CDなんて、年に1枚か2枚買うかどうか・・・」という程度の層がターゲットとでも言いましょうか。

定額聴き放題モデルは、安ければ私も欲しいですね~。その場合、サービスを止めたら音楽が
手元に残らないという前提になるでしょうから、1,200円/月くらいが出費の限界かもしれませんが・・。

●uniさん
お久しぶりです(=゜ω゜)ノ
業界としては「後から安くするのは簡単だけど、あとで値上げするのは絶対に不可能だ」という
考え方があるでしょうから、お茶目さん(笑)な価格設定から始まるのは仕方ないのかもしれませんね。

ただ、それでライトユーザが聴きもしない音楽の思わぬ衝動買いをポコポコと繰り返して、
「案外儲かるじゃん、ラッキー!」ということになってしまうと、今度は本格的に
ヘビーリスナー置いてけぼりの世界が待っているかもしれません(;´д⊂)

ここの字は・・・やっぱり小さいでしょうか?
私の記事は自分で各行の改行位置を指定している関係上、全体的に文字を大きくすると
過去の記事でヘンな位置の改行が続発しまくりになってしまうのですよね~・・・スミマセン。



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